仮想歴史が織りなす極上の喜劇
もしも現代の韓国社会に君主制が維持されていたとしたら、どうなっていたか。ドラマ『21世紀の大君夫人』は、そんな奇抜な架空の歴史を土台にして構築された意欲作である。物語の軸となるのは、莫大な資本を誇る財閥グループの令嬢と、誇り高き王室の血脈を受け継ぐ王族との出会いである。決して交わるはずのなかった2つの世界が衝突する。互いの利益のみを追求した偽装結婚。険しくも予測不可能な軌跡が、色鮮やかに映像として描き出されている。主演を務めるのは、IUとビョン・ウソクだ。
偏見と闘う孤高のヒロイン
物語を牽引するのは、IUが息を吹き込んだヒロインのソン・ヒジュである。彼女は誰もが振り返る秀麗な美貌を持つ。それに加えて、他を圧倒するほどの明晰な頭脳を併せ持っている。しかし、彼女の背後には過酷な事実がのしかかっている。どれほどビジネスの場で非凡な成果を上げようとも、「愛人の娘」という身分の壁が常に付きまとうのだ。
IUは、傷を抱えながらも気高く生きる女性を見事に演じている。ヒジュの自尊心は極めて高い。四面楚歌の状況に陥っても、自らの哲学を決して曲げない。過酷な企業競争を生き抜くしたたかさを持つ。この複雑な人物像を最高度に成立させているのがIUだ。視線の動かし方から、声のトーン、さらには歩幅に至るまで、細部に宿る計算された演技は圧巻である。
威厳と孤独をまとう摂政の姿
ヒロインと対峙するもう1人の主人公が、ビョン・ウソクが演じるイ・アン大君である。彼は由緒正しき王家の血を引く存在だ。先代国王の実弟という極めて重要な立場にいる。兄の急死に伴い、王の座は次世代へと受け継がれた。しかし、玉座に就いた新王はあまりにも幼かった。そのため、彼は若き君主を背後から支え、国政を代行する摂政という重責を担うこととなる。
イ・アン大君を演じるビョン・ウソクの存在感は別格である。高貴な身分にふさわしい気品が全身から溢れ出ている。画面越しに伝わる特有の色気は、視聴者を深く魅了してやまない。政治の世界で見せる氷のような冷たさ。そして、ふとした瞬間にこぼれる優雅な微笑み。その激しい落差が、多くの人々の心を射抜いている。
打算が熱狂に変わる瞬間
財閥内での地位を盤石にしたいヒジュ。そして、不安定な王室の基盤を強固にしたいイ・アン大君。2人の思惑は完全に一致した。すべては愛のない契約から幕を開ける。しかし、利害関係だけで結ばれたはずの絆は、次第に予期せぬ化学反応を起こしていく。打算とプライドが交錯する中で、人間臭い感情が徐々に剥き出しになっていく。人気絶頂の2人の俳優がぶつけ合う熱量の高い演技により、本作は単なるロマンスの枠を超え、極上のエンタテインメントへと昇華されていく。
文=康 大地(こう だいち)
画像=MBC
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