1700年代からの数奇な目覚め
Netflixで配信中の話題作『素晴らしき新世界』。本作でイム・ジヨンが演じるのは、1700年代前半の朝鮮王朝で暗躍した姜禧嬪(カン・ヒビン)だ。彼女は側室として絶大な権力を握った。しかし、熾烈な宮廷闘争の末に国王の寵愛を失う。ついには死罪を言い渡され、悲惨な最期を遂げた。
ところが、彼女の強い執念は死の淵を越えた。処刑から300年の歳月が流れた現代。姜禧嬪の魂は消滅せず、無名の女優シン・ソリの肉体を借りて現世に蘇る。覚醒した場所は、偶然にも韓国時代劇の撮影現場であった。周囲は伝統的な衣装を着た役者ばかりだ。そのため、本物の衣服をまとった彼女が突然現れても、誰1人として違和感を抱かなかった。こうして彼女は、現代の女優として新たな人生の幕を開ける。
冷酷なる現代の「王」との遭遇
未知なる現代社会は、かつての宮廷とは異なる新たな戦場である。そんなソリの前に、1人の男が現れる。チャイル財閥の後継者であるチャ・セゲ(ホ・ナムジュン)だ。彼は新進気鋭の企業「BOJEI(ビーオージェイ)」を率いる若き代表である。利益のためなら手段を全く選ばず、冷徹な判断を下す。その容赦ない姿勢から、血も涙もない冷血漢として恐れられていた。
本来なら交わるはずのない2人である。しかし、予想外の出来事が引き合わせる。ソリの持つ並外れた霊感が、セゲに迫る絶体絶命の危機を未然に防いだのだ。陰謀渦巻く王宮を生き抜いた姜禧嬪である。彼女の研ぎ澄まされた危機察知能力が、現代の過酷な企業闘争においてセゲの命を救う奇跡を起こした。
価値観の衝突と心の融解
命の恩人となったソリに対し、セゲは強い関心を抱く。その結果、彼女はBOJEIのイメージキャラクターに抜擢される。しかし、ここからが波乱の幕開けである。ソリの思考は完全に300年前の女性のままだ。絶対的な身分制度の中で生きた彼女の言動は、現代のビジネスルールと激しく衝突する。
事あるごとに対立し、火花を散らす2人。だが、その衝突は奇妙な化学反応を生む。ソリの気高さと堂々とした生き方は、打算的なセゲの心に衝撃を与えた。幾多のトラブルを共に乗り越えるうち、セゲは彼女の魅力に深く惹かれていく。冷たく凍てついていた彼の心に、次第に温かな血が通い始める。過去の悪女が、冷徹な経営者を人間らしく変貌させていくのだ。その結果、セゲは典型的なツンデレとなった。表面的には硬派の雰囲気を残すが、内面はソリにデレデレである。そのギャップが本当に可笑しい。
現代のソウルで描かれる痛快な神話
物語の展開は息つく暇もない。財閥の跡目争いなど、次々と新たな騒動が勃発する。まるでかつての宮廷劇を思わせる陰謀が、2人の行く手に立ちはだかる。
しかし、ソリは決して怯まない。現代のソウルという大都会を舞台に、彼女は300年前の知恵と度胸を武器にして戦い続ける。時に周囲を唖然とさせるような、常識破りの手法で危機を突破していく。その予測不可能な奮闘ぶりは、見る者に爽快感を与える。現代に蘇った孤高の女性が、どのような未来を切り開くのか。その痛快な大活躍から目が離せない。
文=康 大地(こう だいち/韓流ジャーナリスト)
写真=SBS
異色の傑作『素晴らしき新世界』が視聴者の心をつかんで離さない理由


