人気女優のチン・セヨンが熱演した名作時代劇『オクニョ 運命の女(ひと)』。この作品は、その斬新な設定で多くの視聴者を魅了した。物語の主人公であるオクニョは、非常に数奇な運命を背負っている。彼女は薄暗い監獄の中で産声を上げた。そして、そのまま監獄で成長したという設定なのだ。
主人公が牢獄で育つという物語は珍しい。それゆえに、このドラマにおいて監獄という閉鎖空間は、単なる背景にとどまらない。物語の根幹を牽引する、極めて重要な舞台装置として機能している。では、この特異な施設は歴史上どのような存在だったのだろうか。「典獄署(チョノクソ)」と呼ばれるこの機関の実態に迫ってみたい。
司法と刑罰を司る巨大組織の末端
朝鮮王朝の時代には、国家を運営するための様々な官庁が存在した。その巨大な官僚機構の中で、司法や刑罰の全権を握っていたのが「刑曹(ヒョンジョ)」という役所である。現在の法務省や裁判所に相当する、強大な権力を持った機関だ。そして、この刑曹の管轄下に置かれた実務部隊の1つが典獄署である。
典獄署が担っていた主な任務は2つある。1つ目は、罪を犯した疑いのある未決囚たちを一時的に収容し、逃亡を防ぐことである。2つ目は、裁判によって確定した刑罰を実際に執行することだ。現代の社会制度に当てはめるならば、拘置所と刑務所の機能を併せ持った重要施設と言える。そのため、常に重苦しい空気の漂う牢屋の中には、多種多様な罪人たちがすし詰め状態で収監されていた。
格差が示す当時の職業観
この施設で現場の指揮を執る最高責任者は、「主簿(チュブ)」と呼ばれていた。官僚としての階級(品階)を見ると、主簿は「従6品」に位置づけられている。
一方で、上部組織である刑曹のトップは「判書(パンソ)」と呼ばれる。こちらは現代の大臣に匹敵する国家の要職である。その階級は「正2品」と非常に高い。両者の立場を比較すると、主簿の地位は決して高いとは言えない水準である。
典獄署は、国家の治安維持や法秩序の根幹を支える過酷な現場である。社会的に見れば、極めて重責を担う部署に違いない。しかしながら、行政機関における序列やステータスという観点からは、かなり冷遇されていた。罪人と直接関わり、刑罰を下すという職務の性質上、当時のエリート官僚からは敬遠される傾向にあったのだ。
厳格に定められた5つの刑罰
ここで、当時の厳しい法制度にも目を向けてみよう。朝鮮王朝時代に定められていた刑罰には、大きく分けて5つの段階が存在した。
最も重い刑罰から順番に列挙していく。まずは命を奪う「死(サ)」。いわゆる死刑である。次は、罪人を都から遠く離れた辺境の地へ追放する「流(ユ)」。過酷な環境に置かれる流罪のことだ。その次が、塩田や鉱山などで重労働を強制する「徒(ト)」である。さらに、太い木の杖で罪人の体を激しく打ち据える「杖(チャン)」が続く。最後は、それより細い棒状のムチで叩く「笞(テ)」である。これら5種類の刑罰が、犯罪の性質や重さに応じて厳格に適用されていた。
監獄の扉をくぐる条件
これら5つの刑罰の中で、最も軽い「笞」の判決を受けた者については、ある明確な決まりがあった。彼らは刑場などでムチ打たれた後、そのまま自宅へと解放される。典獄署の牢屋に長期間収監されることはなかったのである。
逆に言えば、典獄署という監獄に閉じ込められるのは、それ以上の罪を犯した者たちに限定されていた。「杖」以上の重い肉体的苦痛を受ける予定の者、あるいは死刑や流罪の執行を怯えながら待つ者たちである。絶望と恐怖が渦巻くその過酷な場所こそが、オクニョという類まれなヒロインを鍛え上げた、典獄署の真の姿だったのである。
写真=MBC
文=康 大地(こう だいち/韓流ジャーナリスト)
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