韓国時代劇はドロドロとした宮廷ドラマが多い。宮廷の中では、国王・王妃・側室・高官・女官といった様々な立場の人たちが絡み合いながら、権力闘争が繰り広げられていった。そういった歴史を難しく感じるかもしれないが、人間の権力に対する欲望や葛藤というのは世界共通の普遍的な要素を持っていて、たとえ歴史に詳しくなくても韓国時代劇は「人間ドラマ」として大いに楽しめる。
脚本がよくできている
韓国時代劇の面白さには3つのポイントがある。
1つ目は、やはり歴史的な題材に恵まれているということだ。たとえば、韓国時代劇は朝鮮王朝を舞台にしたものが多いのだが、朝鮮王朝時代には王位継承をめぐってたくさんの大事件があった。そういう歴史は『朝鮮王朝実録』などを通して現代に詳しく伝わっており、それを存分にドラマに生かせるのが韓国時代劇である。
2つ目は、韓国で時代劇は視聴率が取れるジャンルだということ。とても多くの人が見るだけに予算もたくさん投入できるし、ドラマ制作の人材を注ぎ込むことも可能だ。つまり、制作環境が恵まれているので、それだけ時代劇を面白く作れる。このように、視聴率が取れるジャンルということが有利に働いている。
3つ目は、優秀な脚本家が多いということ。
韓国で文学の世界は、人間はいかに生きるべきかを問う純文学系が多くて、大衆小説のようなものが多くない。
そういう分野に才能がある人は、脚本の世界に入っていくことが多くて人材が豊富だ。いわば、時代劇の面白い脚本を書ける人が多いということも、時代劇を活性化させている理由になっている。
歴史が波瀾万丈
韓国時代劇の多くは朝鮮王朝を舞台にしている。それだけに、朝鮮王朝に対して相応の知識を持っていたほうが、韓国時代劇をもっと楽しめる。
その朝鮮王朝はどんな王朝だったのか。
まずは、国王を頂点とする中央集権国家だったということ。国王の権力が絶対だったので王位継承があれほどもめたのだ。
次に、国教が儒教だったこと。儒教は人間の序列を認める思想があり、結果的に厳しい身分制度が容認された。
さらに、官僚同士の党争が激化したこと。高官たちは権力を手に入れようと、様々な大事件を起こしている。
以上のような要素は、韓国時代劇を面白くするための格好のネタになっている。
結局、歴史が波瀾万丈だったから、それを扱った時代劇もあれほど面白くなったのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化や日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『ヒボン式かんたんハングル』『悪女たちの朝鮮王朝』『韓流スターと兵役』『朝鮮王朝と現代韓国の悪女列伝』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
〔書籍情報〕
書名/『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』
著者/康熙奉(カン・ヒボン)
発行/実業之日本社
価格/900円+税
内容/第1章 韓国時代劇の人気作品で一挙に把握!朝鮮王朝の歴史とエピソード
第2章 韓流時代劇を見るときに必読!「朝鮮王朝の歴史/簡潔編」
第3章 朝鮮王朝をより深く知るための重要な歴史知識
第4章 これが韓国時代劇の主人公たちの実像!
第5章 韓国時代劇の最強ネタは「朝鮮王朝三大悪女」!
第6章 朝鮮王朝を揺るがせた重大事件の張本人
◆資料 歴代国王一覧・歴代王妃一覧・朝鮮王朝年表・人名事典・用語事典