Netflix『素晴らしき新世界』でイム・ジヨンが演じたのは、朝鮮王朝時代の国王の側室だった姜禧嬪(カン・ヒビン)である。典型的な悪女と称されて死罪になったが、タイムスリップして300年後の現代韓国で女優のシン・ソリに成り代わった。それが『素晴らしき新世界』の始まりだった。
ここで気になるのが、姜禧嬪のような悪女が史実の朝鮮王朝にいたのか、ということ。実は、「朝鮮王朝三大悪女」という有名な3人がいた。それは、張緑水(チャン・ノクス)、鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)、張禧嬪(チャン・ヒビン)である。順に説明しよう。
貪欲の代名詞・張緑水
張緑水は、最悪の暴君と称される第10代国王・燕山君(ヨンサングン)の側室である。彼女の物欲は底を知らなかった。宮廷内の財宝を我が物顔で略奪するなど、王の暴政を大いに助長したのである。
その横暴な振る舞いは、当然ながら周囲の激しい恨みを買うこととなる。やがてクーデターが勃発し、燕山君は王座から引きずり降ろされた。強力な庇護者を失った彼女は、民衆の怒りの標的となり、捕らえられて斬首の刑に処された。
刑死したのちも、人々の憎悪は全く収まらなかった。放置された遺体には無数の石が投げつけられ、最終的には大きな石の山が築かれたという。彼女がいかに嫌悪の対象であったかが伺えるエピソードである。
陰謀の代行者・鄭蘭貞
次に挙げる鄭蘭貞は、第11代国王・中宗(チュンジョン)の正室である文定(ムンジョン)王后の手足として暗躍した人物である。
文定王后は、実の息子を玉座に座らせるべく、数々の黒い計略を練り上げた。その実行部隊のトップにいたのが鄭蘭貞である。王妃の絶大な権威を盾に取り、彼女は専横を極めた。
さらに彼女は、王妃の弟である尹元衡(ユン・ウォニョン)の後妻の座を狙う。あろうことか彼と結託し、その正妻を毒殺するという凶行にまで及んだのである。
だが、栄華は長くは続かなかった。1565年に文定王后がこの世を去ると、強力な後ろ盾が完全に消滅する。たちまち権力の座から転げ落ち、最後は自ら命を絶つという惨めな結末を迎えた。
執念の宮女・張禧嬪
最後に紹介する張禧嬪は、第19代国王・粛宗(スクチョン)の寵愛を一身に集めた女性である。ただの一介の女官から、国の国母である王妃にまで上り詰めた異例の経歴を持つ。
しかし、王の心変わりにより、彼女は再び側室の地位へ降格されてしまう。それでも彼女は王妃の座を諦めなかった。激しい怨念を燃やし、時の王妃を呪詛によって殺害しようと企てたのである。
結局、この陰湿な呪いの儀式は露見する。大罪に問われた彼女は極刑を言い渡され、その波乱の生涯に幕を下ろすこととなった。
悪に染まった背景と「真の悪女」
これら3名の女性は、総じて「朝鮮王朝3大悪女」と称されている。彼女たちの共通点は、もともと低い階層の出身だったという点である。身分制度の底辺からのし上がろうとする強烈な渇望が、彼女たちを非道な振る舞いへと駆り立てた側面は否めない。
その過酷な背景を考慮すると、一つの疑問が浮かび上がる。安全な特権階級に居座り、自らは手を汚さずに彼女たちを利用した権力側の人間こそが、本当の意味での悪女だったのではないだろうか。
それにしても、『素晴らしき新世界』の姜禧嬪(カン・ヒビン)はどんな運命をたどるのか。そのことがとても気になる。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
写真=ハン・スンウン
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