数ある韓国ドラマの中でも「青春ドラマの金字塔」と呼ぶにふさわしい作品が全16話の『応答せよ1997』である。笑いあり涙ありの展開に加え、誰もが経験する初恋の瑞々しいドキドキ感が画面いっぱいにあふれている。
物語の構造は、非常に巧みなタイムスリップ的アプローチをとっている。舞台となるのは、1997年の釜山(プサン)の高校に通う6人の同級生たちの日常である。ドラマは当時の青春群像劇を中心に描きながら、並行して15年後となる 2012年にソウルで開かれた同窓会の場面を映し出していく。2つの時代が同時進行することで、「あの高校生たちが、15年後にどう成長したのか」という対比が興味深く浮き彫りになるのだ。
視聴者の関心を強烈に引きつけるのは、初恋の行方にまつわる見事な伏線である。 2012年の同窓会の席上で「今日、1組のカップルが結婚を発表する」という事実が明かされる。個性豊かな仲間たちのうち、果たして誰が結ばれるのか。この謎解き要素が、物語を牽引する大きな推進力となっている。
本作は韓国ドラマにありがちな荒唐無稽なストーリー展開をあえて採用していない。どこにでも起こりうる身近な出来事を中心に据えながら、多様なキャラクター性で物語に深みを与えている。特に初恋をめぐる男女の繊細な心の動きが丁寧に描写されており、見ている者の心を心地よく高鳴らせてくれる。
さらに、「1997年」という時代設定そのものが重要なキーポイントである。当時の韓国は、深刻な経済危機によって国中に失業者があふれる困難な状況にあった。その一方で、金大中(キム・デジュン)大統領の誕生による民主化の加速や、熱狂的なアイドルブームの到来など、社会全体が凄まじいエネルギーに満ちていた時期でもある。韓国が大きく動こうとしていたダイナミズムを、背景として見事に取り込んでいる。
主人公を取り巻く人間模様も実に重層的である。中でも、チョン・ウンジが演じる女子高生シウォンの両親は強烈なインパクトを放つ。つねに激しく言い争いをしており、見る者がハラハラするほど騒がしい。父親は娘がアイドルの追っかけをすることをひどく嫌い、部屋のポスターを破り捨てたり、激怒して娘の髪を切ったりと激しい衝突が絶えない。しかし、いがみ合いの奥底には、不器用ながらも温かい親子の情愛が息づいており、ふとした瞬間に視聴者をホロリとさせる。
そして何より、ソ・イングクの演技がとても良かった。彼は口数が少なく硬派な高校生ユン・ユンジェを実に巧みに演じきっており、最高に好感が持てるナイスガイを作り出していた。ソ・イングクが本作をきっかけにスターダムへと駆け上がったのも大いに納得できる。
文=康 大地(こう だいち)
画像=tvN

