康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」青山島9/地域で助け合う

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『春のワルツ』でハン・ヒョジュが演じたウニョンが住んでいたという設定の民家に向かった。そこには、82歳になるハルモニ(老年の女性)が、一人で暮らしているという。その途中、車でくねくねした狭い道をゆっくり走っていると、農具を持った3人の老人が道の真ん中で立ち話をしていた。

青山島の風景




人と会うのが楽しい

男性が2人に女性が1人。ちょうど農作業を終えて自宅に戻る途中でおしゃべりを楽しんでいるという雰囲気だった。
タクシーを運転するジェファンさんは、クラクションを鳴らすような無粋なことをしない。相手が気づいて道を空けてくれるまで停車して待っていた。そのうち、笑い声を立てていた老人たちが車に気づき、道の脇に寄ってくれた。ジェファンさんは、ゆっくりと車を進めたが、老人たちの横を通るとき、一旦停車して大きな声で挨拶をした。すると、老人たちもジェファンさんに声をかけてきた。みんな、にこやかな表情だ。顔見知りだからそうなのかもしれないが、人と会うのが楽しくて仕方がないという感じだった。
そんな会話の光景を羨ましい気持ちで見ていた。私は、近所の道ではいつもうつむきがちに歩いている。「顔見知りに会っても気づかなかったことを装う」という気持ちがどこかにあるからだ。挨拶することが気恥ずかしい。そんな私からすれば、島の人たちはなんと自然で温かいことか。道端で人と会うことが楽しくて仕方がない毎日なんて、望んでもなかなか得られるものではない。けれど、ここではそれが日常であり、生きる支えになっている。




ひと通りの会話を終えてジェファンさんはゆっくりアクセルを踏んだが、老人たちはずっと私たちの車を見送っていた。
「よく知っている方たちなんですか」
老人たちが見えなくなってからジェファンさんに聞くと、彼は相変わらず穏やかな表情で答えた。
「ええ。このあたりは、お客さんを案内してよく来ますからね」
「明るくて人がよさそうな方たちでしたね」
「みんな助け合って生きていますからね」
そう言われて、「なるほど」と思った。地域でお互いに助け合おうという気持ちがおおらかさにつながるのか、と。近所での触れ合いを持たない私は、ちょっと孤立している気分だった。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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