康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」青山島1/莞島の魚市場

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済州島(チェジュド)の済州港からフェリーに乗って、朝鮮半島の南岸の西に位置する莞島(ワンド)にやってきた。ここから、ドラマ『春のワルツ』の舞台となった青山島(チョンサンド)へ行くつもりだ。

魚市場の賑わい




市場の賑わい

『春のワルツ』は、『冬のソナタ』の演出で有名なユン・ソクホ監督が2006年に制作した作品だ。日本では2007年にNHKの総合テレビで放送されている。
物語のあらすじはこうだ……ソウルで借金を抱え込み、南の島に逃げてきた父と息子。その島で息子は可愛い少女と親しくなる。しかし、父はその少女の手術代を盗んで逃亡。後を追った少女の母は疲れ果て、交通事故で亡くなる。息子はなんとか少女を救おうとして、自分にそっくりの子供をなくしたばかりの裕福な夫婦の養子になる。そうすれば、少女の手術代を出してもらえるからだった。
こうして少年は養父母とともに海外に行き、少女と会えなくなる。それから10数年。少年は天才ピアニストになり、成人した少女と偶然に出会う……。
再会後のひと悶着がドラマの核になるのだが、私は何よりも『春のワルツ』で描かれた青山島に興味を持った。朝鮮半島の西南側には無数の島があるが、ロケハン名人のユン・ソクホ監督が物語の舞台に選んだだけあって、青山島は海と野原と山の景観がすばらしい。それを実際に自分の目で見たかった。




莞島港で青山島行きの船を探したら、ちょうど出たばかりだった。次の便は午後2時半発で、まだ3時間もあった。昼食を兼ねて港の周辺を散策することにする。
旅客ターミナルを出ると、隣が小さな公園になっていて、老人が5、6人集まって花札に興じていた。またまた毎度おなじみの光景を見て、韓国で花札がいかに重要かということを思い知った。そばに寄ると、各人の前に1000ウォン札が薄く積まれているのが見えた。フェリーの中では1万ウォン札が多かったが、同じ花札でも旅行者と年金生活者とでは掛け金に開きがあるのは当然のことだ。自分の懐具合を計算しながら遊ぶのが賭け事の鉄則。ご老人たちは、そのことをしっかりとわきまえている。
公園を過ぎると大通りがあり、その両側には食堂や土産物屋がズラリと並んでいる。その一角に、「活魚海産物センター」という看板が出ている市場があった。
体育館のような建物の中に入ると、近海で採れた魚介類がたらいからあふれんばかりに並べられていた。タコ、イカ、ウナギ、スズキ、鯛、平目……。みんな活きがよさそうで、中にはピョンピョンとはねている魚がいた。そのたびに、市場のアジュンマが笑いながら魚を取り押さた。




私が見たところ、たらいが小さすぎるのである。そこにホースでたっぷり水を注ぎ込んでいるものだから、魚も楽にたらいから飛び出せる。活きの良さをアピールするための演出とにらんだが、さてどうだろうか。
魚を見て回る度に、威勢のいいアジュンマから盛んに声を掛けられる。けれど、一人旅の途中に活魚を買ってもどうにもならない。
「大丈夫、ホラ、食べるところがあるから」
そう教えられて市場の端を見ると、湯気がもうもうと上がっている。観光客が大勢で鍋を囲んでいるようだった。
<うまいだろうなあ>
鯛でも平目でも、刺身を堪能したあとに鍋でしめれば最高の食事だ。
けれど、1人で1匹さばいてもらっても食べきれない。大勢の団体客の中でポツンと1人で食事をするのも侘しい。自分の立場をわきまえているので、しばらく食堂の賑わいを羨ましげに見たあとで、踏ん切りをつけて市場を出た。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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