韓国・南西岸への旅4「ようやく莞島港に着いた」

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船尾のベンチに座って漠然と後ろの海を見ていたときのこと。灰色のハンチングをかぶり白い靴を履いた70代の男性が横に座り、「先生様」と渋い声で呼びかけてきた。年上の大先輩から「先生様」と言われて恐縮した。

莞島港の風景




済州島の金柑

年上の大先輩は、私が手に持っていた済州島の地図を見たかったようだ。もちろん、「どうぞ、どうぞ」と言って渡すと、大先輩はじっくりと地図を見てから、「なるほど」と意味ありげな頷きをした。
「済州島の人ではないのですか」
私が聞くと、再び意味ありげに頷いた。本当は意味なんかないのかもしれないが、いかにも学者を思わせるような、もったいぶった大先輩の頷き方が、私に勝手な勘繰りをさせてしまうようだ。
「地図で見学した場所を確認してみたけど、済州島も思った以上に広かったね。ところで、あなたはどこから?」
「日本から来ました」
「そうでしたか」
大先輩はそう言って、ご自身なりに納得していた。




ちょうどそばには、黄色いサンバイザーをかぶった50代の女性が金柑の入った袋を持って立っていた。大先輩はその金柑をたくさんもらい、「うまい、うまい」と食べ始め、その香りがこちらにも及んできた。
ひそかにおすそ分けを期待していたら、その気持ちが通じたのか、3つほどくれた。のどが渇いていたので旨かった。3つを一気に食べたあと、金柑を韓国語でなんと言うかと大先輩に聞いたところ、ただ首を振るだけだった。
すると、女性が「これはキンカンというのよ」と明るい声で言った。意外だったので、「日本でもキンカンと言いますが、韓国でも同じですね」と私が言うと、女性は私の肩を叩きながら「だって、もともと日本から種を持ってきて済州島で栽培を始めたんですから」と教えてくれた。
女性が着ていたTシャツには、済州島の農協の文字が入っていた。黄色いサンバイザーの人たちは農協の団体だったのである。どうりで金柑に詳しいはずだ。
船室に戻ってしばらく横になっていたら、午前11時半にフェリーは莞島(ワンド)港に着いた。

文・写真=康 熙奉(カン・ヒボン)

韓国・南西岸への旅1「済州港から始める」

韓国・南西岸への旅2「いよいよ出航」

韓国・南西岸への旅5「活魚海産物センター」

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