韓国・南西岸への旅17「アワビのお粥」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 

その日は港近くの旅館に泊まった。韓国の旅館は一般的に素泊まりなので、食事は外の食堂へ出かけることになる。港の周辺を散歩しながら、水槽の中の魚が最も生きがよく見える食堂に入った。50代の夫婦が切り盛りしている店で、特に奥さんがてきぱきと動いていた。

フェリーも待機中だった




ただいま欠航中

旅に出て一番多く会うのは、働いている人である。中でも、人がキビキビと働いている姿を見ていると気持ちがいい。
私はメニューをしばらく見たあとで、アワビのお粥を注文した。これは、韓国南部の海沿いや済州島などに多い料理である。アワビの身と肝を煮込み、ゴマ油も入っている。こってりした料理だと思われがちだが、案外あっさりしていて味わい深い。特大の器に入ったアワビのお粥を食べて、私は韓国の南の島に来ていることをしみじみと実感した。
十分に満足して旅館に戻り、夜は部屋で静かに過ごした。窓を開けても聞こえてくるのは潮騒のみ。健全すぎて涙が出てくるほどだった。
翌朝、午前6時半に出るフェリーで島を離れようと思っていた。6時10分に外に出ると小雨が降っていて、あたりは霧で霞んでいる。「もしや」と思って乗船券売場へ行くと、窓口には誰もいなかった。そばに立っていた男性に聞くと、船は欠航だという。
「霧が晴れないかぎり船は出ない」




そう言われてしまえば、腹をくくって、あとは霧が晴れるのを待つしかない。待合室では、スナック菓子を仲良く食べている夫婦、朝のテレビドラマを食い入るように見ている30代女性の2人連れが、いつ出るかわからない船を気長に待っていた。
しばらく待合室にいたが、雨だけはやんだので、外に出て岸壁に佇みながら霧にけむる海を見た。
小さなエンジン音を響かせて霧の中から一艘の小船が現れた。その船には海女さんとその夫と思われる男性が乗っていて、大量のワカメが積んであった。この霧の中でも夫婦で仕事に精を出している……そう思うと、冷たい海にもぐる海女さんがとてもけなげに思えてきた。

文・写真=康 熙奉(カン・ヒボン)

韓国・南西岸への旅1「済州港から始める」

韓国・南西岸への旅2「いよいよ出航」

韓国・南西岸への旅18「霧が深い港」

必読!「ヒボン式かんたんハングル」

「韓流ライフ」というジャンルの中に、「ヒボン式かんたんハングル」というコーナーがあります。ここには、日本語と韓国語の似ている部分を覚えながら韓国語をわかりやすくマスターしていく記事がたくさん掲載されています。日本語と韓国語には共通点が多いので、それを生かして韓国語の習得をめざすほうが有利なのです。ぜひお読みください。

ページ上部へ戻る