康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」珍島7/雲林山房

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雲林山房に入ると、広い庭園があり、その奥に展示館があった。この雲林山房を築いたのは、珍島出身で朝鮮王朝末期の優れた教養人だった許錬(ホ・リョン/1808~1893年)である。

優雅な雲林池




映画『スキャンダル』

許錬は詩、書、画において天賦の才能を発揮し、40歳のときには朝鮮王朝24代王の憲宗(ホンジョン)を謁見し、王が使う墨と筆で画を描くという栄誉を受けた。都での名声は高かったが、1856年、師の金正喜(キム・ジョンヒ)が流刑先の済州島で亡くなると、その死を悼んで故郷に戻り、画室を建てて余生を送った。それが、今の雲林山房になった。
画業は代々受け継がれ、2代目は許瀅(ホ・ヒョン)、3代目は許楗(ホ・ゴン)と許林(ホ・リム)の兄弟、4代目は許林の息子の許文(ホ・ムン)が担った。4代にわたって山水画の達人を生み出しているというのは特筆もので、山紫水明の世界を描いた作品群を展示館でたっぷりと堪能することができる。
広い敷地には、許錬にゆかりのものが点在している。それは、許錬が植えた百日紅、蓮池として著名な雲林池、許錬が絵を描いた画室、許錬が住んだ生家などである。私は特に雲林池が気に入った。周囲の樹木とよく調和していて、中央に浮島があり、水面には蓮の葉が美しい模様で浮かんでいる。




案内表示板によると、ペ・ヨンジュンが主演した映画『スキャンダル』の撮影に使われたという。
確かに、私もよく覚えている。映画の中に、ペ・ヨンジュンが扮する両班のチョ・ウォンが女性3人と一緒に、池に舟を浮かべて風雅な時間を過ごすシーンが出てくる。芸人たちが歌と楽器で伝統的な調べを奏でる中で、舟に乗ったチョ・ウォンは同乗している女性の気を引こうとして、妖しげな流し目をする。そのときのペ・ヨンジュンの演技が秀逸で、映画を見る観客を同じく舟遊びに誘い出してくれるような雰囲気があった。
その映像を思い出しながら、しばらく雲林池のそばで佇んだ。水に浮かぶ蓮の葉を見ていると、心がとても穏やかになっていく。
(続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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