康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」青山島13/実直な人

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3時間近く島を案内してもらってから、再び港に戻ってきた。タクシーのチャーター料金は5万ウォン(約5000円)で、妥当な金額だった。ジェファンさんの人柄のおかげで、青山島の印象はさらによくなった。

港に戻ってきた




誰も傷つけない生き方

私は接客するときの彼の表の顔を見たにすぎないけれど、タクシーの中に2人だけで少しでもいれば、およそ相手の心の内は透けて見えるものである。相手の息づかいまで聞こえる密閉された空間は、心理学の教科書よりも人間について多くを教えてくれる。
ジェファンさんからは、花札に興じて大声を出す、という印象だけはどうしても浮かんでこない。仮に、一緒に飲み屋に行っても会話がはずまないだろう。彼は人の悪口は言わないだろうし、誰かの詮索もしないはずだ。沈黙が続き、気まずい思いも起こる。けれど、その沈黙は彼の誠実さの表れでもある。無理に話題を作って自分を主人公にせず、誰も傷つけない。そんな生き方が見えてくる。
一方の私は、誠実であろうとすればするほど息が詰まってくる。人に気に入られたいだけで、誠実であらねばならぬと根っから思っていないのかもしれない。
だから、その場の雰囲気で浅はかな自分をさらけだしてしまう。酒に酔うと特にその傾向があるが、ジュファンさんといれば、どんなに飲んでも軽薄な言葉を口にしなくても済みそうだ。




「今度来たら、いつでも電話してください」
別れ際にそう言ったあとで、彼は「日曜日の午前中だけ駄目なんです」と付け加えた。
理由は、欠かさず教会に行くからだという。最後まで、私が彼に感じた実直さは変わらなかった。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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