追憶の済州島紀行5「三姓穴の穴が見たい」

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三姓穴の案内によると、石柵に囲まれた芝生の庭の中に3つの穴があるという。ところが、石柵の前で何度も爪先立ちしたが、穴があるとされる、ロープで示された囲いの中をまったく窺い知ることができなかった。他の人たちも、いろいろと方向を変えて何とか見ようとしていたが、結局は諦めてしまっていた。

済州島の滝(写真=済州特別自治道観光協会)




ロープの囲いの中

石柵の位置が穴から遠すぎるのである。
大勢の人が穴を見たからといって埋まってしまうわけではあるまいし、料金を取って中に観光客を入れる以上は、穴が見えるように石柵の位置を調整すべきである。
「肝心の穴が見えなくて、何の三姓穴か」
諦めきれないので、腰の高さの石柵に昇ってみた。近くの新婚カップルに笑われたが、他人の視線を気にしている場合じゃない。おかげでかなり視線は高くなったのだが、それでもロープの中がまだ見えない。さすがに私も意地になった。
よく見ると、正面側の石柵と違って、庭の右横は高い石垣で遮られている。その石垣に昇れば恥ずかしがり屋の穴もさすがに隠れてばかりはいられないだろう。幸いなことに、石垣を覆うように生えている樹木の1つに梯子が掛かっている。何のための梯子かはわからないが、それを昇れば石垣に上がることができそうだった。
ただし、梯子は極端に不安定で、一段昇る度にグラグラ揺れて危うく落ちそうになった。それでも慎重に昇りきり、なんとか石垣に上がることができた。




すると、どうだ。ロープの囲いの中が本当によく見えるではないか。
三姓穴は、3人の神人がそれぞれ出現した穴であるとされているが、その3つの配列は「品」という字を形作っているかのようだった。
ただし、確かに1つは穴に違いないが、あとの2つは単なる窪みで、穴と呼ぶには無理があった。
「ここから三姓人が出てきたとは、到底考えられないな」
そうは思うが、つまらぬ詮索はしないほうがいい。神話を現代的なパソコン頭で理解しようとしてはいけない。身も心も神話の世界に入り込まないと、物語は生き生きとしてこないのである。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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