1960年代の風情
別に女子高校生が嫌な顔をしたわけではなく、気持ちよく挨拶もしてくれていた。しかも、ジェファンさんはしょっちゅう客をここに連れてくる様子だった。
それにしても……。
見学料を取るわけでもなく、貝殻細工を販売しているわけでもない。自分で作った数多くの貝殻細工を棚に飾ってあるだけだ。それを、ブラリとやってきた旅行者に気さくに見せてくれるという、この家の度量に感心した。
嫌な顔一つせずに招き入れてくれた貝殻細工の作者、彼女と立ち話をしていた人たち、勉強していた女子高校生。誰もがおおらかな雰囲気を持っていた。
そのおおらかさは、何によってもたらされているのか。美しい海岸線、青々とした麦畑、大樹が生い茂る山、人々が寄り添いながら暮らしている集落……。青山島では見るものすべてがどこか懐かしい。
「ここに来る人がよく言うんですよ。1960年代の風情をこれほど残している場所も珍しい、と。この島は、私が小さい頃とほとんど変わっていないんですよ。それが訪ねてくる人にやすらぎを与えるようですね」
ジェファンさんの言葉が心に温かく響いた。
(第5回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=「韓国のそこに行きたい」(著者/康熙奉 発行/TOKIMEKIパブリッシング)