康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」珍島5/観光案内所のアジュンマ

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となりで屋台を切り盛りしている40代の女性が近寄ってきて、「少し休んでいけ」と私に声をかけた。すると、観光案内所のアジュンマは「その必要はないから」と冷たくあしらった。私としては屋台でゆっくり酒を飲みたい気持ちもあったのだが……。どうやら、観光案内所と屋台は気まずい関係らしい。

屋台が並んでいる




しつこい屋台

私は観光案内所のアジュンマに聞いた。
「ここで待っていれば、タクシーが来ますかね」
「ここからどこへ行くの?」
「特にアテはないんですけれど」
「そしたら、雲林山房(ウンリムサンバン)に寄っていきなさいよ。バスターミナルへ行く途中にあるから」
「どんなところなんですか」
「有名な画家の山荘だったところ。知り合いを呼ぶから送ってもらいなさいよ。そこからは、バスターミナルに戻るバスも出ているわ。ちょっと待ってね」
そう言って、アジュンマは携帯電話で知り合いに電話をかけたが、相手が出なかった。彼女は「おかしいわね」と首をかしげながら、何度も携帯電話を掛け直していたが、それでも応答はなかった。




「困ったわね。車で送ってあげようとしたんだけど」
アジュンマがそう言うと、その動きを敏感に察知したのか、屋台の女性が再び駆け寄ってきて、「タクシーを呼んであげようか」と大声を出した。すると、観光案内所のアジュンマは「必要ないのよ」と強い口調で言い返した。
しつこい屋台と苛立つ観光案内所。なぜ仲が悪いのか。
私なりに推測してみた。
一、あまりに屋台が料金をボルので観光客から苦情が出ている。
二、屋台がタクシーを呼ぶと運転手からマージンを取る。それを観光案内所は苦々しく思っている。
三、二人は家が近所で親の代から仲が悪かった。
四、意外にも二人はかつて恋敵だった。
おそらく、理由は一かもしれない。あるいは、一から四までの全部か。いずれにしても、こんなことを詮索している私も懲りない男である。
そのうち、タクシーが来て、客を下ろして走り去ろうとした。すると、観光案内所を猛然と飛び出したアジュンマがタクシーに駆け寄って必死に停めた。そのときの形相がすごかった。「このタクシーを逃してなるものか」という執念がこもっていた。
(続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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