煮込みにするという発想に拍手!
青年に礼を言ってから食堂に入った。すでにウナギ煮込みの注文は通っているようで、店のアジュンマは私を座敷の窓側の席に案内すると、何も聞かずにそのまま厨房に戻ってしまった。
座敷にいる他の客は、中年のカップルが2組だけ。やはりグツグツと煮込まれたウナギを食べている。その匂いが漂ってくるだけで、もう腹が鳴り出した。それが何度か続いたあと、アジュンマが大きな盆に料理をたくさん載せてやってきた。
アッという間に、膳の上は皿に盛られた料理でいっぱいになった。キムチ類は白菜、カクテキ、大根の細切りの3種類、野菜のあえものはニラ、豆もやし、青とうがらし、ふき、青菜の5種類、塩辛はイカ、タラの内臓の2種類、それに、キュウリ、ノリ、小魚が加えられていた。それらをおかずにしてご飯を食べ始めたところで、煮込まれたウナギが運ばれてきた。
汁はとろとろになっている。早速、スプーンですくって汁を飲んだが、あっさりしていながらコクがある味わい。ネギや大根と一緒にウナギもじっくり煮込まれていて、その身を口に運べばすぐに溶けていくような食感だった。骨も柔らかくなっているので、そのまま噛み砕ける。初めての食感が舌に心地いい。
何よりも、ウナギ、というのがうれしい。
朝型の私は、昼までに1日のあらかたの仕事を終えるようにしているが、「今日はいい仕事ができたなあ」と思うとき、昼食によくうな重を食べる。その度に思う……世界でもウナギをこれほど美味しく食べるのは日本だけだろうなあ、と。
けれど、韓国もさすがである。ウナギ煮込みという発想に拍手だ。ウナギの身が柔らかくなりすぎて、汁の中でグチャグチャになってしまうことを嫌がる人もいるかもしれないが、煮込むほどに味がしみてまろやかになるのは確かだった。
このウナギ煮込みを食べただけでも、「莞島に来て本当に良かった」と思った。
(第4回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=「韓国のそこに行きたい」(著者/康熙奉 発行/TOKIMEKIパブリッシング)