康熙奉の「韓国に行きたい紀行」済州島4/ウェドルゲの露店

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しみじみと済州島(チェジュド)の今昔を思った。かつて、都の人が身震いするほど恐れた済州島は、今は韓国最高の観光地となった。よく言われている「東洋のハワイ」という讃え方は大げさだが、それでもここには行楽に必要な景観、美食、観光施設のすべてが良好に揃っている。

ウェドルゲから見た海




チヂミとマッコリ

昔の流刑地は経済効果が高い観光のメッカへと変貌した。済州島の出身だというだけで蔑まれた父や母は、この激変ぶりを草葉の蔭でどのように考えているだろうか。
ましてや、このウェドルゲは父と母の実家の近くにあるのだ。
……ウェドルゲ? ただの変形した岩じゃないの。そんなものを見て何が楽しい? 昔は子供だって遊びに行かなかった。
そんなふうに母は思っているかもしれない。
けれど、時代は変わった。遊歩道には大勢の観光客が集まっている。
ウェドルゲがよく見渡せる場所に、チヂミの屋台が出ていた。隣にテーブルと椅子が用意されていたので、私はチヂミとマッコリを注文して腰を下ろした。屋台は50代と20代の女性二人が切り盛りしていた。目元がよく似ているので母と娘に違いない。その娘のほうが、視線も合わせず無愛想な表情でマッコリとサービスのキムチを持ってきた。整った顔だちなのに、なんとも惜しい。




<嫌々手伝わされているのかな>
気の毒に思いながらキムチを口に運ぶと、かなり酸っぱかった。やはり、キムチは漬けたばかりのものが一番。それでも、今は酸っぱいキムチを私は喜んで食べた。好みに一貫性がないのである。
続いて、ニコニコ顔の母親がアツアツのチヂミを運んできた。彼女の商売上の笑顔を見ているだけで、この屋台に寄って良かったと思った。しかも、チヂミのモチモチ感とマッコリの野性的な酸味がよく合っている。
景色がいい野外でこんなに旨いものを安く楽しめるのは幸せだ。あとは、無愛想な娘が機嫌を直してくれれば、言うことはないのだが……。
ふと見ると、そばに猫が2匹いて、妙になれなれしく食べ物をねだってきた。韓国では、以前から猫は不吉な動物と見なされてあまり見かけなかったが、最近はベットブームが起こってなかなかの人気だとか。でも、ここは住宅がまるでない海岸。犬ならともかく、なぜ猫がいるのか理解できなかった。
その猫も立ち去る気配がないが、無視した。野菜を切っている娘のほうを見るともなく見て考えた。




親子が一緒に客商売をするというのは、難しい問題をたくさん抱えるものなのか。ここに、乏しい売り上げをふんだくっていく父親が加わったら、さらに関係はどうなるのか……。
せっかくウェドルゲに来て、他人の親子の心配をしている私も暇(ひま)人である。マッコリを追加注文して、さらに沈思熟考の態勢をととのえた。猫は相変わらずそばでおねだりしていたが、私の妄想はとどまるところを知らない。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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