たとえば、ソウルの街を歩いていて感じるのは、「自動車が右側通行」「道路が広い」「坂が多い」といったことだ。さらに、注意深く見ていると、自転車に乗っている人をあまり見かけない。そこが日本の各都市との大きな違いだ。ソウルだけではない。韓国ではどの都市に行っても自転車が少ない。その理由は?
自転車に不向きな大都市
韓国では自動車の多さと比べて、自転車に乗る人が少ない。
その理由は、交通事情が関係している。
経済発展にともない、韓国は完全に自動車優先の社会を築いてしまった。それゆえ、自転車が街を走るのはとても大変なのだ。
何よりも、大通りになると横断歩道が少なくなっている。この場合、自転車の走行を想定していない通りが本当に多い。
車道の下に作られた歩行者用の地下道も、入口には階段しかない場合が多く自転車は通れない。
また、歩道も自転車の通行を想定していない。
このように、韓国では自転車の走行に向いていない通りがあまりに多すぎる。
さらには、地形の問題がある。
ソウルは特に起伏の激しいところで、街のいたる所に坂がある。このため、ソウルを自転車で移動しようとすると、かえって歩くより疲れたり時間がかかったりする。
わかりやすくいえば、ソウルは自転車に不向きな大都市なのだ。それゆえ、出前もみんなバイクで行なっている。
さらに、韓国らしい理由がある。それは、韓国人の自転車に対する意識が日本とはまったく違うということだ。
韓国人の中には両班(ヤンバン/朝鮮王朝時代の上流階級)という意識が強い人が多く、自転車に乗ることに抵抗がある。
「見た目がチマチマしている」
「クルマが買えないみたいで、世間体がよくない」
そんなふうに見なされる傾向がある。
要するに、「乗るならば自動車に乗るべし。自転車で必死にペダルをこぐ姿は見栄えが悪い」と思われがちなのだ。
それは、大都市でも地方でも同じ。
かくして、韓国人の多くは、クルマに乗るか悠然と歩くか、という選択肢になり、自転車に乗らない。
ただし、若者にとって自転車は、青春の躍動感をあらわす乗物としていいイメージもある。これからは、少しずつ韓国でも自転車が増えてくるかも。
文=「ロコレ」編集部