康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」珍島2/島のど真ん中

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バスターミナルでバスを下りて周囲を見渡しても、見えるのは山ばかりだった。当初、バスターミナルは島の一番突端の位置にあると予測していた。島を縦断して行けるところまで行くのがバス路線の使命であると思っていたからだ。

目的の海岸に着いた




タクシーに乗る

海が見えないどころか、潮の香りさえしない。意外にもバスの終着地は島のど真ん中であった。
タクシーに乗り、真っ先に「有名な海割れが見られるかどうか」を運転手さんに聞いたら、「2日前に終わった」とのことだった。残念ではあったが、とにかくその海岸に向かってもらうことにした。
不思議なことに、運転席に料金メーターが見当たらない。
<まさか白タクに乗ったわけではないよな>
そう思いながら、もう一度、バスを下りたあとの自分の行動を振り返ってみた。間違いなく、タクシー乗り場を確認したうえで、そこからタクシーに乗っている。なのに、なぜ料金メーターがないのか。
<着いたときの請求料金次第ではひと悶着あるかも>
私は一応、心の準備をしていた。




15分くらいで目当ての海岸に着いた。海沿いの道路には数軒の屋台が出ていて、ポツポツと観光客の姿も見えていた。
タクシーを下りるとき1万5000ウォン(約1800円)を請求され、とっさに高いと思った。15分くらいの走行だ。韓国でタクシーに乗り慣れた感覚では、いいところ1万ウォンだ。
「メーターがないじゃないですか」
そう言うと、50代の運転手さんは表情も変えずに、「いや、ちゃんとあるよ」と足元を指差した。
身を乗り出して見ると、運転手さんの足元に「1万5400ウォン」と表示された料金メーターが鎮座していた。
まさか、と思う位置に料金メーターがあって意表をつかれた。後部座席から見えなくしているのは感心しないし、料金メーターの金額にも疑問は残るが、表示されている以上は払わざるをえない。しかも、運転手さんは400ウォン負けてくれようとしているのである。




渋々といった感じで1万5000ウォンを払った。運転手さんは「帰りも必要ならここに電話をして」と名刺をくれたが、それも渋々受け取った。渋々が続いたせいか、下りる動作も心情的にスローになる。去りゆくタクシーを見送りながら、名刺を受け取ってしまう自分の弱さがつくづく情けなかった。
(続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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