韓国・南西岸への旅5「活魚海産物センター」

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デッキの端に立ち、フェリーが接岸する様子をずっと見ていた。いきなり、「パーン」という凄まじい衝撃音が起こり、船を繋ぎとめておくためのロープが、フェリーから岸に向かって打ち放たれた。そのとき、本当にヒヤリとした。

済州島から乗ってきたフェリー




市場の光景

ロープの先端が岸で待つ数人の作業員のど真ん中に向けて突っ込んでいった。
「あぶない!」
私が叫んだとき、作業員たちは見事な運動能力でロープの先端をうまく避けた。そして、すぐにロープを数人で持って、岸の船止めに縛りつけた。その動作の素早いこと。いつもながら、「餅屋は餅屋」という思いを強くした。プロには素人が見ほれるような技がある。もし、私がその仲間に加わったら、作業のしょっぱなでロープをもろに腹にくらって病院送りになってしまうだろう。
そのとき、なぜだか、ドッジボールで球を当てられてひっくり返っている中学生の自分が思い浮かんだ。情けない苦笑い。連想はいつもあわれな自分の姿にたどりつく。
莞島(ワンド)港の旅客ターミナルを出ると、隣が小さな公園になっていて、老人が5、6人集まって花札に興じていた。またまた毎度おなじみの光景を見て、韓国で花札がいかに重要かということを思い知った。そばに寄ると、各人の前に1000ウォン札が薄く積まれているのが見えた。フェリーの中では1万ウォン札が多かったが、同じ花札でも旅行者と年金生活者とでは掛け金に開きがあるのは当然のことだ。自分の懐具合を計算しながら遊ぶのが賭け事の鉄則。ご老人たちは、そのことをしっかりとわきまえている。




公園を過ぎると大通りがあり、その両側には食堂や土産物屋がズラリと並んでいる。その一角に、「活魚海産物センター」という看板が出ている市場があった。
体育館のような建物の中に入ると、近海で採れた魚介類がたらいからあふれんばかりに並べられていた。タコ、イカ、ウナギ、スズキ、鯛、平目……。みんな活きがよさそうで、中にはピョンピョンはねてたらいから飛び出す魚がいる。そのたびに、市場のアジュンマが笑いながら魚を取り押さえていた。
私がにらんだところ、たらいが小さすぎるのである。そこにホースでたっぷり水を注ぎ込んでいるものだから、魚も楽にたらいから飛び出せる。活きの良さをアピールするための演出とにらんだが、さてどうだろうか。

文・写真=康 熙奉(カン・ヒボン)

韓国・南西岸への旅1「済州港から始める」

韓国・南西岸への旅2「いよいよ出航」

韓国・南西岸への旅4「ようやく莞島港に着いた」

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