韓国の鉄道を乗りつくした探訪ライターの植村誠と康熙奉(カン・ヒボン)が語り合う対談です。今回も長い韓国での滞在を通して強く感じたことを話し合います。
古さを顧みる人が少ない
植村「韓国では、『古いものを保存するという意識が希薄では』と思うんですよ」
康「古いものに対する対する愛着があまりないですね。新しいものにどんどん変えていきます。その分、古いものは切り捨てていく。そうやって成長してきたのが韓国社会だと思います。朝鮮戦争で完全に国土が破壊されつくして、そこからの復興だったわけですが、そのときの考え方というのが『新しいものをどんどん作っていくんだ』ということで、切り捨てられたものがとても多い」
植村「それは韓国の人がよく言いますね。書籍やCDにしても、古いものがお宝として保存されることが少ないです。もう、貴重なレコードも二束三文という感じです」
康「日本なら、アンティークなものに価値を見いだします。何十年前の書籍だったりレコードだったり……。韓国はそういう古さを顧みる人が少ない。そういうところは多様性に欠けますね。たとえば、韓国の人はみんなで一緒になって突き進んでいくところがあって、そこから外れて『俺はこれをやるんだ』っていう人が少ないんです。なにしろ、みんなが高学歴を求めて突っ走っていって、そこから外れた人は置いていかれて、残った人だけがさらに突き進んでいくみたいなところがあります。それは、韓国そのものが、目標を決めたらそこに突き進んでいく社会だからです」
植村「桑原史成氏が著作『韓国真情吐露』の中で触れている話ですが、ある写真家が韓国で写真展を開いたんです。とても好評で大学生からの質問も多かった。その1つが『日本では、先生みたいにフリーランスのカメラマンでご飯が食べられるんですか?』というもの。こういう質問が出ること自体が、韓国ではどこかの会社に所属しないで個人で仕事をする発想がないのかと思いました」(ページ2に続く)