対談/植村誠・康熙奉「少数精鋭のエリート主義がはびこる」

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スポーツのメダル至上主義

康「スポーツも、小さいころから才能がある人だけを少数精鋭で鍛えまくって立派な選手にするというのが韓国の現実。早い段階からエリート主義的な育て方をします。才能を早く見せない限り、国家代表レベルまで行けないわけですよ。日本だったら、途中から急に成長して一流になるような野球やサッカーの選手がいくらでもいるじゃないですか。韓国では、小学校や中学校くらいに才能を見せておかないとその先にはいけない」
植村「日本みたいに、部活動みたいな発想がまったくないわけですね。かつて、日本に留学に来たという若い人と知り合いました。そのときは午後4時くらいだったのですが、そんな時間に学生が街を歩いているのを見て驚いていました。『我々の国では、その時間は学校で自習して、その後は塾へ通います』と言っていました。さらには、『日本のように多くの人が部活に励むということはありません。部活をするのはプロをめざすような人ばかり』と説明してくれました」




康「たとえば高校の場合は、日本だと陸上部があって、サッカー部があって、野球部があって、テニス部があって、水泳部があって、バスケ部があって……と、およそのスポーツの部がそろっているじゃないですか。韓国は違います。『ここは野球だけ、この学校はサッカーだけ』と決まっているんです。一番わかりやすい例は高校野球。日本は夏の甲子園をめざして二千数百の高校が地方大会に出場しますが、韓国は全国大会をめざす高校の数は100にはるかに届かない程度。極端に部員数が違います。それは、少数精鋭のエリート主義を採用している結果です。
植村「それでも、オリンピックでメダルをたくさん取りますよね」
康「メダル数にかぎれば、少数精鋭のエリート主義は成功しています。けれど、スポーツ人口の裾野は広がらない。一般の人がスポーツを楽しむ割合が低いんです。それが、メダル至上主義の影響と言えるかもしれません」

(写真左)植村 誠(うえむらまこと/探訪ライター)
気になる土地を訪ね歩くのをモットーに、国内外の鉄道の旅をはじめとする旅行記事を中心に取材・執筆。韓国はこれまで50数回の訪問を重ね、韓国のKORAIL(鉄道)の全路線を制覇しつつ、気ままな町散策などを続けている。韓国のドラマや映画、音楽にも親しみ、オフタイムにも韓国漬けの日々を過ごす。著書に『ワンテーマ指さし会話 韓国×鉄道』(情報センター出版局)ほか。韓国散策の模様は、無駄話ブログ「つれなのふりや」(http://nekoike.moe-nifty.com/turenanohuriya/)にも掲載中。

(写真右)康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化・社会や、日韓交流の歴史を描いた著作が多い。韓国の兵役も長く取材している。主な著書は『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』『朝鮮王朝と現代韓国の悪女列伝』など。

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