バスに「乗せていただく」
それでも、運転手の立腹はおさまらなかった。違反を取られて再び動きだしたバスは、さらにスピードを出して田舎道を疾走した。
100キロは出ていただろう。
「もう1回つかまったら、どうするのか」
そう考えるのは乗客だけで、運転手は「本当のスピード違反を見せてやる」という気持ちだったのかもしれない。
乗っているほうは、たまったものじゃないが……。
同じ韓国でも大都市の場合は、バスはおおむね平穏に運行されている。乗客が多い中で運転手もわがままにできない。
しかし、地方に行くと事情は変わる。乗客は個性の強い運転手のバスに「乗せていただく」のである。
そして、運転手が好きな歌謡曲を大音量で聞かされる羽目になる……。
(文=康 熙奉〔カン・ヒボン〕)