珍島の絵はがき
ハラボジに言われた通り、駐車場の先まで行ってバスの停留所を探したが、どうしても見つからない。近くに観光案内所があったので、そこで聞いてみようと行ってみると、偶然にも先ほどのハラボジが座っていた。
「バスの停留所がわからないのですが……」
「駐車場の端に立っていればバスが停まってくれるから心配はいりません。それより、まだ時間があるから中に入っていらっしゃいよ」
好意に甘えて、私は小さなプレハブの中に入った。ハラボジの横には40代の男性が一緒に座っていた。
「雲林山房はどうでした?」
ハラボジにそう聞かれたので、私は大きく頷きながら言った。
「山水画も良かったし、蓮池の周辺の景色が美しくて安らぎますね」
「気に入ってもらえて私もうれしいですよ」
ハラボジと話をしていたら、となりにいた40代の男性が会話に加わってきた。よく聞いてみると、奥さんが日本人だという。ただし、彼は日本語がほとんどわからない様子だった。ということは、夫婦の会話はもっぱら韓国語なのだろう。一体、どこで知り合ったのだろうか。
「ソウルに行ったとき知り合ったんですよ」
照れながら彼はそう言っていたが、奥さんもソウルからこの珍道まで来るにはかなり勇気が要ったのではないか。いくら海割れの島として知られていても、結婚して住むとなったらまったく別の苦労があるに違いない。
それだけ夫の支えが欠かせないが、男性は優しく家庭的な感じがした。私に珍島の絵はがきを何枚かくれたのだが、その中には海割れの写真を載せたものも含まれていて、人の群れが沖合の島まで押し寄せている様子がよくわかった。(ページ4に続く)