康熙奉の「韓国のそこに行きたい紀行」青山島11/『西便制』の舞台

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確かに、ハルモニにはよくわからないだろう。古いだけの家にどんな価値があるのか、と。しかし、映画やドラマを制作する側からみれば、古い民家ほど絵になる。家は年月を経て風格が出るものなのだ。

映画『西便制』の場面が人形で再現されていた




パンソリの映画

ハルモニの作業を長く中断させては申し訳ないので、私たちは腰を上げることにした。ハルモニは泥が付いた手を大きく振って見送ってくれた。
「とても元気なハルモニでしたね」
ジェファンさんにそう言うと、「この島のハルモニはみんな元気ですね」と笑っていた。おそらく、彼のそばにも元気なハルモニがいるのだろう。
私たちは続けて隣家に寄ってみることにした。藁葺き屋根の古い家があり、映画の場面を再現するような、主人公たちの「そっくりさん人形」も作られていた。この民家を撮影に遣った『西便制』は1992年に制作された映画で、日本では『風の丘を越えて』というタイトルで公開されている。
パンソリという朝鮮半島伝統の謡曲を歌う旅芸人の話で、パンソリを上達させるために父親が娘を盲目にさせてしまうという悲話が織り込まれていた。
旅芸人の親子三人が、地方の誰も通らないような小道で、「珍島アリラン」を歌いながら陽気に踊るシーンが忘れられない。貧しい日々の中で必死に生きている3人が、束の間に共有した家族の絆。その喜びが映像の中ににじみでていた。




そのシーンを撮影した場所も青山島の田舎道だというので、ジェファンさんに案内されて、同じような小道を少し歩いてみた。低い石垣で仕切られた細い道がくねくねと続いている。それを見ていると、まるで『西便制』の名場面がフラッシュバックのように甦ってきた。
遠くに目をやると、上にいくに従って緑の色合いが変わる段々畑が見える。ありふれているようで、どこでも見られない風景。それは淡い水彩画のようであり、いつまで見ていても飽きることがなかった。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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