芸能兵が誕生
2004年9月にはショッキングな事件が明るみになった。一部のプロ野球選手たちの腎臓疾患を装った兵役忌避事件が社会問題となり、その捜査過程で芸能界でも摘発された人が続出した。
特に、ソン・スンホン、チャン・ヒョク、ハン・ジェソクといった著名な俳優が含まれていて、彼らは出演予定のドラマをキャンセルされるという状況になった。
「模範にならなければいけない芸能界のスターが意図的に兵役をのがれているのは絶対に許せない」
世論は厳しくなり、以後は芸能界のスターにとっての兵役問題は、生き残れるかどうかの「踏み絵」のようなものとなった。
ただし、韓流ブームがアジアを席巻する中で、芸能界のスターには特例を与えてもいいのではないか、という風潮も生まれた。
スポーツの分野では、オリンピックの銅メダル以上、アジア大会の金メダル、サッカー・ワールドカップのベスト4以上、といった成績をあげると、選手は兵役を免除される特典があった。
芸能界のスターも作品を通して大いに国威発揚を果たしているので、スポーツ選手と同様に兵役免除の特典を与えてはどうか、という議論も政府内で起こっていた。しかし、最終的に実現しなかった。芸能界のスターは個人的に莫大な収入を得ていることがネックになってしまったのだ。
兵役免除の特典がスターに適用されなかった代わり、「スターは芸能兵になれる」という代替制度が生まれた。これは、国防広報院の広報支援隊員になって軍の活動を内外にアピールする、というもので、軍務の中身が「広報イベントでのパフォーマンス」になったのである。イ・ジュンギを初めとして多くのスターが、この広報支援隊員を務めて兵役を終えている。(ページ3に続く)