『空港に行く道』は愛の言葉はなくとも風景と音楽に癒される究極のラブストーリー

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イ・サンユン×キム・ハヌル主演『空港に行く道』は高品格な大人のラブストーリーだ。あまた溢れるラブストーリーの中で、あくまでも個人的にだがこれほどまでに自分の中で色褪せない作品は珍しい。幸せな時も落ち込んでいる時も繰り返し見たくなる処方箋のようなドラマなのだ。




韓国の美しい風景

『空港に行く道』は2016年に韓国KBSで放送されたドラマ。それぞれの夫婦関係に悩む既婚男女が不倫でも友情でもない究極の愛を見せてくれた作品で、本国での放映時には30代から40代の子育て世代の女性達から多くの共感を得た。
一見、不倫モノと呼ばれて敬遠されそうにも思えるが、妻であり母親であるヒロインが時として迷いながら懸命に生きる姿に多くの女性が自分を重ね共感したのではないだろうか。
チェ・スア(キム・ハヌル)とソ・ドウ(イ・サンユン)は一人娘を海外留学させたことをきっかけに知り合う。不幸なことにドウは愛する一人娘を留学先での事故で亡くしてしまうが、ドウの心を誰よりも癒してくれたのは妻ではなくスアだった。スアもまたやり場のない日々の辛さをドウの優しさによって慰められていくようになる。
この作品は韓国ドラマにしては珍しいほど展開がスローなので、堪えられないほどハマる人もいればそうでない人もいるはず。本国での視聴率がそれほど奮わなかったのも事実だが作品の完成度としてはかなり高いのではないかと思っている。




美しい風景と音楽、心を癒してくれる素敵なセリフの数々にすっかり虜になってしまった。全てを包み込むようなドウの優しさにあたかも自分が守られている錯覚に陥ってしまうことが、本作が私の処方箋になっている理由の1つなのだと思う。
ドラマ中盤でスアがドウの建築事務所を訪ねる。留守にしていたドウがスアに電話で部屋のブラインドを開けるように促すシーンがあるのだが、そのシーンには息を飲んだ。そこにはソウルの美しい風景が広がっていたのだ。その風景を観ながら少し休んでいけばいいと言うドウ。その風景とドウの心が重なり見ていて胸がいっぱいになってしまった。
どうしてもその風景に近づきたくて後日ロケ地を訪れた。梨泰院近くにある地下鉄6号線緑莎坪(ノクサピョン)駅から10分ほど歩いた静かな住宅街にその建物はあった。中に入ることは叶わなかったが周辺を散歩してほんの少しスアの気分を味わえたことが今でも忘れられない。
本作は2人がとても愛し合っているのにもかかわらず、愛の言葉が全く出てこないのも印象的だった。2人の気持ちを代弁するものが風景だったり、場所だったり、仕草だったりするのだが言葉以上に愛が伝わってくるようで心地よかった。




また、本作は夫婦関係の在り方も考えさせられる作品だったような気がする。主人公それぞれの連れ合いがひと癖ある人物なのだが、終盤になってその裏に隠された真実が明らかになったのには胸が痛んだ。
夫婦は分かり合っているようでも実際はわかっていないことのほうが多いのだろう。人も物事も1つの方向から見ているだけではわからないものだと考えさせられた。
僭越ながらこのドラマで一つだけ惜しい点がある。こともあろうにラストが少々好みではなかった。ハッピーエンドはとても嬉しかったのだが会えない時間が短すぎやしなかったかと。
映画『マディソン郡の橋』のようにとは言わないけれど、これが老年になっての再会だったらそれはそれでまた違った感動が待っていたのかもしれない。それでも何かに癒されたいと思ったとき、私はいつもこのドラマを見て韓国の美しい風景に慰められている。

文=朋 道佳

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