爆発的な人気を獲得して終了した『涙の女王』。近年まれにみる傑作であった。このドラマですばらしい演技を見せたキム・スヒョン。このトップスターの若き成長期を振り返ってみよう。そこには、信念を持った生き方があった。
まさに演技の申し子だった
キム・スヒョンは、幼い頃は内向的で人見知りが強かった。そんな彼が俳優を志したのは、高校生になってからだった。成績も優秀ではなく、人と話すのが苦手な彼を心配した母親が、学習塾ではなく演劇学校に通うように勧めたのだ。
「僕は幼い頃、気が弱くて見知らぬ人とは目を合わすこともできませんでした。特に女性とは……(笑)。また、両親は共働きだったので、1人で遊ぶことが普通でした。それを心配したお母さんが『スヒョン、お芝居をしてみない?』と声をかけてくれました。それで治療する気持ちで、ある芸術研究会に入りました」
母の勧めで始めた演劇だったが、キム・スヒョンは徐々に自分が変わっていくのを実感した。
「演劇をしながら僕自身が変わっていきました。演劇研究会の先輩たちからは『初対面の人のところに行って親しくなれ』という宿題を出されました。舞台に立てば他の人になったようだったし、公演を終えた後の拍手に喜びを感じました。『俳優になる』と言うと、お母さんは拍手してくださいました」
演じることの楽しさを知ったキム・スヒョンは、多くの舞台に挑戦して自身の演技力を磨いていった。そんな彼が、テレビドラマに出演するようになったのは、2007年7月から始まったシットコム『キムチ・チーズ・スマイル』である。しかし、オーディションの話がきたとき、彼は自身が出演する舞台の準備に追われていた。
仕方がないので、キム・スヒョンはトレーニングウェアのまま、オーディションに臨んだ。
当時を振り返りキム・スヒョンは、「合格よりも目の前の舞台のほうが大切だった」と語る。しかし、飾らない姿を見せるキム・スヒョンを監督はとても気にいり、見事にキャスティングされた。
『キムチ・チーズ・スマイル』は月曜から金曜までの週5日放送だったため、撮影分量はとても多かった。最初は舞台の稽古と撮影を並行させていたキム・スヒョンだが、その生活を続けるのは限界があった。
悩んだ末にキム・スヒョンは長い間準備していた舞台を降板することにした。キム・スヒョンは決断の理由をこう話した。
「公演が始まってから途中で降板するのは、一緒に演じる俳優にも観客にも礼儀を欠くことになります。一緒に練習していた俳優たちにとても申し訳なくて、辞めた日はどれくらい泣いたかわからないです」
自分を育ててくれた舞台からの卒業。当時20歳だったキム・スヒョンにとって、その決断はとても辛いものだった。
構成=「ロコレ」編集部
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