ユン・ソクホ監督の新しいドラマへの出演を決めたペ・ヨンジュン。先に出演が決まっていたチェ・ジウとの共演も心強かった。1996年に『初恋』で共演しているとはいえ、当時はまだ2人とも新人に近い立場だった。それから5年。名実ともにトップ俳優となったペ・ヨンジュンとチェ・ジウの共演はメディアでも大々的に報じられて注目を集めた。
高校生を演じる
2001年12月8日、『冬のソナタ』の出演者が集まり、シナリオを読む練習が行なわれた。このとき、ユン・ソクホ監督はペ・ヨンジュンに久しぶりに会ったのだが、「彼は俳優として風格が出てきた」と率直に感じたという。
このとき、ペ・ヨンジュンは29歳だった。デビューしてから7年が経っていた。寡作ではあったが、常に全身全霊を傾けて出演作に取り組み、作品ごとに多様な演技スタイルを身につけていた。
しかも、その年の夏にはアメリカで3カ月あまりを過ごし、見聞を広めることで人間的にも幅広い素養を身につけていた。
そうしたすべての要素が、ユン・ソクホ監督が言うところの「俳優としての風格」に結びついていたのである。ペ・ヨンジュンにとって、まさに『冬のソナタ』は20代の最後を飾るにふさわしい作品だった。
ただ、心配な点があった。それは、学生服を着て高校生役を演じるということだった。韓国ドラマの常識からいえば、そういうときは子役を使うものなのだが、ユン・ソクホ監督はそうしなかった。「高校時代と10年後の姿が違うと、あまりにギャップが大きくなってしまう」というのが理由だった。
……どう演じれば、普通の高校生のように見えるのだろうか。
ペ・ヨンジュンなりに、いろいろと工夫を試みた。その中で、特に心掛けたのが、目の演技だった。
言いようのない孤独、出自に対する猜疑心、異性への恥じらい、大人への反抗、初めての恋の喜び、純粋すぎる感性……。そうした10代の情感をペ・ヨンジュンは目の動きで表した。
もちろん、29歳が17歳を演じるのだから、映像の上で違和感が残るのは仕方がないことだが、それでもペ・ヨンジュンが演じた高校生には、「本当にこういう子がいるんだろうなあ」と思わせる真実味があった。だからこそ、『冬のソナタ』は初恋を追憶するドラマとして大成功したのである。
ユン・ソクホ監督の意図は正しかった。
仮に、高校時代のチュンサンに子役を使ったとしたら、視聴者はこのドラマにあれほど感情移入できただろうか。多少の無理は承知のうえで、ペ・ヨンジュンが高校時代と10年後の両方を演じたからこそ、初恋への追憶はあれほど真に迫っていたのである。
それは、高校時代と10年後を同じく演じたチェ・ジウも同様だった。二人はまさに最高の共演相手を得たといえるだろう。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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