ドラマは創作だ。奇想天外な展開もよくある。しかし、『トッケビ～君がくれた愛しい日々～』のような突拍子もない設定は見たことがない。今回、『韓国ドラマ！愛と知性の10大男優』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著／星海社)を通して、ヒョンビンの魅力について迫ってみよう。
画像＝(左)ｔｖＮ『トッケビ』公式サイトより (右) 『韓国ドラマ！愛と知性の10大男優』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著／星海社)
深い思索
コン・ユが扮した主人公のキム・シンは、高麗時代から900年以上も生き続けている人物だった。しかも、胸に剣が刺さったままなのだ。一歩間違えるとキワモノ扱いされそうだが、コン・ユの存在感があったからこそ、『トッケビ～君がくれた愛しい日々～』は重厚なファンタジー作品になっていた。
キム・シンのような奇怪な人物を演じたコン・ユは、撮影中は何を心掛けていたのだろうか。
彼はこう語っている。
「キム・シンという人物が持つ歴史と生い立ちが、『トッケビ』というドラマにおいてとても重要なポイントになっていたと思います。キム・シンが心の奥底に抱えている寂しさ、哀しみ、真実性……それを持ったまま生きた彼の人生と歴史が視聴者を納得させる役割を果たしたのではないでしょうか」
実際、900年以上も生きる人物を演じるというのは、どんな俳優も今までやったことがない。だからこそ、それを演じたのがコン・ユでよかった。彼ならば、キム・シンの悲しみをファンタジーの世界で抒情的に見せてくれるだろうから……。
そのキム・シンは、胸に剣が刺さったまま現代をさまよっているが、「トッケビの花嫁」と呼ばれる女性を見つけて剣を抜いてもらうと、彼は安らぎの世界に行けるのであった。
しかし、そんな花嫁はどこにいる？
キム・シンはずっと探しつづけてきた。世界中をさまよいながら……。
そして、ようやく見つけた。
それが高校３年生のウンタク（キム・ゴウン)だった。
この女性もまた普通ではない。自分にだけ幽霊が見えていて、キム・シンの命運を握る絶対的な存在にもなっている。
彼女はドラマの中で「人間は生まれ変わって四度の人生を経験する」という輪廻転生を教えられる。
その四度とは？
一度目は種を植え、二度目は水をやり、三度目に収穫して、四度目に食べる……。
それはすなわち、人間が「生」と「死」が交差する世界を何度も往来することを意味している。
つまり、「死」は終わりではないのだ。
次に生まれ変わるための始まりなのだ。そんな世界観をコン・ユは深い思索に基づいて演じてくれた。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
ヒョンビンの肖像／『韓国ドラマ！愛と知性の10大男優』が描く世界
パク・ソジュンの肖像／『韓国ドラマ！愛と知性の10大男優』が描く世界
