韓国時代劇が描く歴史についてわかりやすく解説したのが『新版 知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物』(康煕奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社発行)である。この本の一部を掲載して、韓国時代劇の理解に役立つ知識を紹介しよう。第二回は「両班を初めとする身分制度」について取り上げる。
身分制度について
朝鮮王朝時代には、厳然たる身分制度があった。恩恵を受けたのは両班〔ヤンバン〕階級の人たちだ。役人となった両班は高等官僚として中央集権国家の担い手になっていたし、地方に在住する両班は有力な地主として庶民を統治した。
彼らの上に立つ身分は王族しかいなかった。王とその家族は国の絶対権力者として君臨したが、実務的に行政を仕切っていたのは両班であり、朝鮮王朝時代は両班を中心とした社会であったとさえ言える。
ただ、両班という地位は世襲だが、科挙に合格しないと官職を得られなかった。それゆえ、両班に生まれた子供は、幼いころから高度な教育をたっぷり受けて科挙の合格を必死にめざした。
同時に、庶民が知らない漢字を操り、詩を作り、書を習った。まさに、学問と文化に親しむ生活にひたったのだ。
特に大事だったのは、一族の繁栄を末永く保つこと。そのためにも、両班は婚姻を通じて貴族階級同士の縁戚関係を強めていった。こうなると、典型的な既得権益者だ。その役得は朝鮮王朝時代を通じて守られた。
彼らに支配される側の身分を見ると、上から中人〔チュンイン〕、常民〔サンミン〕、賤民〔チョンミン〕となっている。
中人は、両班の下で実務を担当する人たち。下級官僚が該当する。職能を発揮することで経済的には安定した生活を確保できるが、政治的には権力を持っていない。「宮廷女官 チャングムの誓い」の登場人物たちを例にすると、尚宮(サングン)と呼ばれる役職の人たちがこの中人に該当する。
中人の下は常民。これは一般庶民のことで、人口のうえでは一番多かった。農業、商業、手工業に従事する人たちがほとんどで、毎日仕事に追われ、教育を受ける機会はない。それでいて重い税を課せられるので生活が大変だった。
身分制度の中で最も下に位置する人たちが賤民。大部分は奴婢で、所有者の意図に沿って売買されるのが常だった。生まれながらにして過酷な運命にあったのだ。結婚して家庭を持つことはできたが、どんな仕事につくかを自分では決められなかった。厳しさに耐えかねて逃亡する人もいて、その生活は悲惨だった。
構成=「ロコレ」編集部
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