日本に留学してきた韓国人学生にこれまで数多く会ってきたが、ちょっとガッカリしたのは何人かが「日本語を覚えるために留学していますが、日本の文化や生活にはあまり関心がありません」と言ったときだった。
人情味あふれる人たち
私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)はこう言ってみた。
「せっかく日本に来ているのだから、日本人の考え方や生活様式を理解する努力をしてみたら?」
親切心で言ったのだが、「そのつもりはありませんね」とあっさり言った女子学生もいた。
それ以上は何も言えなくなった。
日本の文化や生活に関心がないのに、なぜ日本語を学ぼうとしているのか。
そのことが不思議だった。
留学の本当の目的をはきちがえているような気がしてならなかった。
その一方で、心から感心した留学生も多かった。その男子学生は、慶応大学で言語学を学んでいた。
ただ外国に行ってみたかったという旅行気分的な留学が少なくない中で、彼は真摯に日本で勉強を続けていた。
「韓国では、日本人のことを『自分のことしか考えない人が多い』という風に語られることが多かったんです。でも、実際に日本各地をまわって人情味あふれる人たちに会ったら、そんなイメージなんか吹っ飛びました」
普段は柔和な表情だが、自分の意見をきちんと言うときだけ視線が鋭くなる。いかにも学者タイプの知性派だった。
彼は、日本語と韓国語の助詞の違いについて勉強している。
日本語と韓国語の比較を通して見えてきたものは何か。
「韓国ははっきりと物事を言うし、そういう言葉遣いをします。逆に、日本語にはまわりくどい言い回しが多すぎます。具体的に自分の意志をはっきりと言わない言葉なのかも。特に語尾があいまいですね。日本語は語尾を聞かないと肯定か否定かわからないのに、語尾をはっきり言わなくても誰もが日常生活を送っていけます。本当に均一に近い社会なんだと思いますね」
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