張禧嬪は「朝鮮王朝随一の悪女だ」と言われたりする。欲深い女性が王妃になり、転落して最後は自決させられるというと、自業自得と考える人も多いだろう。しかし、彼女ほど波瀾万丈の人生を歩んだ人は他にいない。そういう意味では、朝鮮王朝でも希有な女性なのである。
大きな事件の裏に……
張禧嬪(チャン・ヒビン)は、誰かを呪い殺そうとしたのかもしれないが、実際に手を下して殺してはいない。
他に、朝鮮王朝では女帝となって数多くの人を殺したという王族女性が何人もいる。そういう「巨悪」に比べて、張禧嬪の悪はどれほどのものなのだろうか。少なくとも、「朝鮮王朝随一の悪女」と決めつけるのは酷のような気がする。
むしろ、不可解なのはトンイこと淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)である。ドラマ『トンイ』で描かれたような明るいイメージの女性だと想像すると、ちょっと違う。1694年には淑嬪・崔氏を毒殺しようとした事件から政変が起こっているし、1701年には彼女が自ら告発して張禧嬪を自害に追い込んでいる。「大きな事件の裏に淑嬪・崔氏あり」という様相を呈している。
実は、張禧嬪が仁顕(イニョン)王后を呪い殺す理由はない。仁顕王后は1年半も病床に伏していて、子供を産むことは無理なのである。むしろ張禧嬪が警戒したのは淑嬪・崔氏だった。淑嬪・崔氏が粛宗(スクチョン)の次男を産んでいたからだ。
張禧嬪が自分の息子を王にするためには淑嬪・崔氏が要注意だった。それだけに、張禧嬪が淑嬪・崔氏を呪い殺そうとするならわかるのだが、仁顕王后を標的にするのはちょっと信憑性がない。(ページ2に続く)
張禧嬪(チャン・ヒビン)!側室に転落した王妃
トンイは張禧嬪(チャン・ヒビン)より悪女なのか?
「張禧嬪(チャン・ヒビン)よりトンイが悪女!」と言える3つの根拠