一番悲しい思いをしているのは?
新兵として入隊した場合、すぐに訓練に入るわけではない。最初の3日間は準備期間としていろいろとやるべきことが多い。精神的な検査を受けたり、軍人としての心構えを説明されたり……。特に重要なのが身体と健康状態の検査だ。
それは、これから始まる厳しい軍務に耐えられるかどうかを調べるわけであり、ソ・イングクはこのときに「痛いところがある人は申告せよ」と言われたので「足がちょっと不便」と申告したのである。
その点について、ソ・イングクはこう語っている。
「病院に行ったらすぐにレントゲンを撮り、その後で相談を受けました。この問題によって私が軍隊を出なければいけないということは想像もできませんでした。はっきり言えば、私の過ちであったと考えています」
軍隊で厳しい訓練前に身体状態を精密に検査するのは当然であり、その時点でソ・イングクの足に大きな故障があることが明らかになった。つまり、ソ・イングクは痛いところがあっても深刻には考えていなかったが、軍隊に入隊した時点ではそれが大変深刻な問題になってしまったというわけだ。
とはいえ、ソ・イングクが意図的に足の故障を治療をしなかったことはまったくありえないことであり、それによって彼を非難するのは筋違いだ。ただし、軍服務前の健康状態を軽く考えすぎていたのはソ・イングクの至らなかった点であり、そのことは反省しなければならない。
彼が述べているように「堂々と国防の義務を果たしたい」という気持ちが強かっただけに、今になって一番悲しい思いをしているのはソ・イングク自身なのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)