一人旅の寂しさ
画業は代々受け継がれ、2代目、3代目、4代目と名人を輩出した。4代にわたって山水画の名人を生み出しているというのは特筆もので、山紫水明の世界を描いた作品群を展示館でたっぷりと堪能することができる。
広い敷地には、許錬にゆかりのものが点在している。それは、許錬が植えた百日紅、蓮池として著名な雲林池、許錬が絵を描いた画室、許錬が住んだ生家などである。私は特に雲林池が気に入った。周囲の樹木とよく調和していて、中央に浮島があり、水面には蓮の葉が美しい模様で浮かんでいる。
蓮の葉を見ていると、心がとても穏やかになっていく。
そのうち、中年男性だけの団体客がやってきて、大声で冗談を言い合っていた。総勢で20人ほど。顔が真っ赤な人が多く、バスの中で賑やかに酒盛りを楽しんでいたことをうかがわせた。
静寂が破られたので、私は雲林山房を出た。道路を隔てた向かい側の食堂にも大勢の団体客がいた。テラスでマッコリを飲む人たちが大声で笑い合っている。駐車場に目をやると、幹事役の人が手に抱えきれないほどの焼酎を持って観光バスの中に入っていく光景も見られた。このときばかりは、一人旅の寂しさを痛切に感じた。(ページ3に続く)