康熙奉の「韓国に行きたい紀行」済州島10/済州港の待合室

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済州港の旅客ターミナルは、早朝だったこともあって人もまばらだった。7時50分発の船なので、まだ50分ほど時間があった。食事をしようと思い、三つ並んだ食堂の中で一番無難な店に入った。目安は客の数。他の二つの店は客がいなかったが、選んだ店では中年の男女が仲良くクッス(韓国風手打ちうどん)を食べていた。その光景が私に安心感を与えてくれた。

旅客ターミナルの待合室




待合室の人々

実際は目論見違いだった。大皿に並々と盛られたクッスは見た目こそ旨そうだったが、麺がまだ生煮えだったし、スープも胡椒がききすぎていた。そのうえ量が多くて食べあぐねていると、40歳前後の警官がいかにも警戒中といった雰囲気で姿を現した。
すぐに、店の主人がサッと寄って行き、栄養ドリンクを無料で渡すと、警官はえらそうな表情で受け取り、片手を腰に当てて一気に飲んだ。まるで、「ファイト一発!」という感じだった。その満足げな顔を見ていると、単に栄養ドリンクが飲みたくなったから寄った、というようにも見えた。
警官はさらに携帯電話で自宅に連絡していた。
「子供はもう学校に行ったのか」
食堂内の誰もが聞こえる大きな声だった。庶民的な警官といえば聞こえがいいが、単なるサボリ魔である。
それから近所の噂話を延々と始め、それは私が食堂を出るまで続いていた。この警官のゆるんだ態度を見ていて、この旅客ターミナルに差し迫った危険はないな、と妙に安心した。




出発まで時間があったので、喫茶コーナーのカウンターに座り、緑茶を飲んだ。50代の夫婦が店を切り盛りしていた。
隣の席に30代後半の男が座り、コーヒーを注文した。男は「砂糖を多めに入れて」と念を押したので、アジュンマ(おばさん)は言われたとおりインスタントコーヒーに砂糖を多めに入れて出した。飲み始めた男はちょっと首をかしげ、さらに「砂糖をもう一杯入れて」と言った。その瞬間、どういうわけかアジュンマと私は目が合って、思わず互いにニヤリとした。愛はないが仲間意識を共有する「ニヤリ」である。
(次回に続く)

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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