やっぱり「都会のネズミ」
「田舎のネズミ、都会のネズミ」は、こんな内容だ。
田舎のネズミと都会のネズミが仲良くなった。都会のネズミは田舎のネズミに誘われて畑に行った。けれど、食べられたのは麦の屑ばかりだった。
都会のネズミは言った。
「君の暮らしは惨めだね。都会においでよ。美味しいものがたくさんあるよ」
田舎のネズミは喜んで都会へ行った。確かに、見たこともないような御馳走が人間の家にあった。早速、チーズを食べようとしたとき、その部屋に急に人間が現れたので、田舎のネズミは一目散に逃げた。ほとぼりがさめた頃、今度は乾燥した無花果を見つけたので、それを食べようとしたら、またもや人間がやってきて、田舎のネズミは大急ぎで逃げた。たまらずに、田舎のネズミは言った。
「君はこのまま都会にいなよ。僕は田舎に帰る。ここは怖すぎるよ。僕は安心して麦の屑を食べたいんだ」
東京の下町で育った私は、20代のとき、信州で暮らしたいと思っていた。田舎暮らしがあこがれだったのだが、実際に実行していたら、どうだっただろうか。現実にぶつかって、早々と退散していたに違いない。
一方、ジェファンさんは、たとえ都会に出ても結局は故郷に帰ってくるだろう。「夜が真っ暗になるとしても、安心して暮らすことが一番なんだ。星も、とってもきれいだし……」と言いながら。
私はやっぱり「都会のネズミ」。ビクビクしながらでも、夜のネオンに囲まれて生きていかなければならない。
(第6回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=「韓国のそこに行きたい」(著者/康熙奉 発行/TOKIMEKIパブリッシング)