強い思いが激流のように
先ほども書いたが、前方に座っているのはファンではない。おそらくほとんど全員がユンホのステージを初めて見る兵士の方々だ。さっきまで若くて綺麗な女性のセクシーなダンスに「ヒュー、ヒュー!」と言っていたのが、今は「ユーノユンホ!」と太い声で全力で掛け声もしている。
公演が演者と観客が一体になって完成するものだとしたら、この時の完成度は並外れていたと思う。ステージのユンホから何かが観客に向けて広がり、そこに集う全ての人の魂を一つに束ねたような感覚と言ったら、大袈裟だろうか?
あの時の感覚はなかなか言葉には表現ができない。ユンホがステージで歌い踊る間、波のように押し寄せる何かに鳥肌が立ち続けていた。
息をするのも忘れていたような気がする。様々な海外、国内のアーティストのコンサートを見てきたが、あの感覚は初めてだった。
あの時感じたエネルギーは一体何だったのか?
もしかしたら、兵士として厳しい規律の中で生活しながら、ユンホの中で堰き止められていた「ステージに立ちたい!表現したい!」という強い思いが激流のようにあふれ出ていたのかもしれない。
この龍仁のステージはユンホにも何かしら感じるものがあったと思う。それが何かは本人のみ知ることだが、この時、「頼りがいのあるかっこいいモンスター」に向けて加速度が増したのは間違いない。
文=M.Takahata