傑作!『10人の泥棒たち』
主役クラスの俳優が大勢出ていたが、配役それぞれのキャラが明白で、背負っている人生がよく描かれていた。
とりわけ感心したのが、キム・ヘスとチョン・ジヒョンの掛け合いだ。騙しあっている2人の腹の底が透けて見えて、おかしくて仕方がなかった。
今もチョン・ジヒョンがキム・ヘスに呼びかけるときの「オンニ!(姉さん)」という声が耳に残っている。欲がからみあう人間関係をあれほど明快に描き出すチェ・ドンフン監督の手腕に舌を巻いた。
しかも、『10人の泥棒たち』で際立っていたのが外壁づたいのロープアクション。あの「ハラハラ感」は格別だった。一連のシーンを見た日本の映画関係者はショックを受けたのではないか。
「この手があったのか。先を越された」
そう思わなければ、創作者としてよほど鈍感だ。
『10人の泥棒たち』が韓国で観客動員数が1000万人を楽々越えたのも納得だ。自分でお金を払って映画館に行く人は、ああいう映画こそ見たいのである。
その『10人の泥棒たち』で韓国の映画ファンを大いに楽しませたチェ・ドンフン監督。次作に注目が集まるのは当然だが、それが『暗殺』である。(ページ3に続く)