「鉄の女」の国
先述したように、朝鮮王朝時代の妻は、夫から勝手に離縁されても文句が言えなかった。そればかりか、女性は再婚することも許されていなかったのである。社会制度というものが、女性にはあまりに冷たかった。
そんな朝鮮王朝時代の社会通念は、韓国が建国された後もしばらくは残っていた。わかりやすく言えば、男尊女卑の風潮が根強かったのである。
しかし、逆風は強い意志を育てる。
差別されてきた女性が弱いかと言うと、決してそんなことはない。口論になったら男性は絶対に女性に勝てないし、生活力のない夫に代わって食堂を経営する逞しい女性は韓国中にたくさんいる。
何よりも、韓国ドラマを見れば一目瞭然である。「鉄の女」が次々に出てくるではないか。あれは、誇張でも何でもない。肩書に頼って見かけ倒しになっている男を凌駕する女性たちが、韓国社会を支えていると言っても過言ではないのだ。
私の母も弱くなかった。普段は優しく日本語で話していた母も、父と大喧嘩になったときは、済州島の強い訛りが入った韓国語で父をやりこめていた。
今、韓国は女性大統領の時代になった。世の中がすっかり変わったことを、男たちは骨身に沁みて痛感しなければならないだろう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)