恩人に報いたい
恩義のある2人のPDから出演依頼を受けて、ペ・ヨンジュンも大いに迷った。
ここで、もし、ペ・ヨンジュンがMBCを選んでいたら、果たしてその後の韓国ドラマの展開はどうなっていただろうか。
日本で韓流ブームが起きたきっかけは、誰もが指摘するように、『冬のソナタ』の放送だった。特に大きかったのはペ・ヨンジュンの主演ということ。彼のたぐいまれな魅力が韓国ドラマのイメージを飛躍的に高めたことは間違いない。
けれど、もし『冬のソナタ』がペ・ヨンジュンの主演でなかったとしたら……。
おそらく、日本での韓流ブームも違ったものになっていただろう。それだけに、ペ・ヨンジュンが『冬のソナタ』への出演を決断したことが、本当に大きな分岐点になった。
それでは、なぜ、ペ・ヨンジュンはKBSを選んだのか。
2人のPDを比べるわけではないが、やはりデビュー時に自分を育ててくれた人は特別なのである。その恩に報いたいという気持ちも強かったし、俳優としての自分自身の成長を名監督に見てもらいたい、という思いも募っていた。
それゆえ、シナリオをまだ読んでいないにもかかわらず、ペ・ヨンジュンはユン・ソクホ監督の作品を選んだのだ。
同時に、チェ・ジウとの共演も心強かった。1996年に『初恋』で共演しているとはいえ、当時はまだ2人とも新人に近い立場だった。それから5年。名実ともにトップ俳優となったペ・ヨンジュンとチェ・ジウの共演はメディアでも大々的に報じられて、大いに注目を集めた。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)