傑作探訪『トッケビ』第6回/「トッケビそのもの」

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多くのドラマはまるで消耗品のように放送を終えると忘れられる宿命にあるが、コン・ユが主演した『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』は、放送から時間が経ってもその輝きを失っていない。これほど余韻が残るドラマは滅多にないほどだった。

画像=tvN




変わらない印象

私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)はこれまでたくさんの韓国ドラマを見てきた。
俳優の話も数多く聞いてきた。
その俳優たちは、演技の世界で役柄を忠実に演じながら、現実の世界に戻ると、人間味あふれる「素の自分」を見せてくれた。
そんな姿を見てきて韓国の俳優に特に感じたのは、「誠実さ」ということだった。自分を飾らず、偽りを述べず、素直に自分の至らなさを吐露する……それこそが好感の持てる「誠実さ」だった。
ペ・ヨンジュンもそうだったし、イ・ビョンホンも同様だったし、ヒョンビンも同じだった。そして、コン・ユもまた、真摯に自分と向き合う人間であった。
その「誠実さ」についてさらに言うと、初めてコン・ユという俳優の存在を知ったときから彼の印象は変わっていない。
始まりは、2003年の『スクリーン』だった。このドラマはキム・テヒが主役デビューした作品としてよく知られるのだが、コン・ユは人のいい青年の役で出ていて、私は彼の演技を初めて見た。




自然体の演技であったが、それゆえに印象が薄かったとも言える。
しかし、誠実な人間を演じさせたら誰をも納得させられる演技力を持っていることをうかがわせた。
その後のコン・ユの活躍は特別に説明するまでもないだろう。
キム・ウンスクという人気脚本家が熱烈に主演を望んだという事実が、コン・ユの魅力を示している。
コン・ユは5年間もオファーを断り続けた。それでもキム・ウンスクは諦めなかった。その熱心さに心を動かされて、コン・ユはようやく『トッケビ』の主演を受け入れた。それによって、あの傑作が世に出たわけである。
忘れられない言葉がある。
2017年5月に行なわれた百想芸術大賞の授賞式でコン・ユが『トッケビ』によってテレビ部門・男性最優秀演技賞に輝いたとき、彼はこう述べている。
「私はどこにいて、誰であって、今どこに行こうとしているのか……」
それは道に迷ったかのような発言で、晴れの舞台に似合わない受賞コメントだった。
しかし、その言葉の中に「ありのままのコン・ユ」が見え隠れしていた。




トッケビとは何か。
それが、時空を越えて深遠な世界を行ったり来たりする魂だとすれば、コン・ユもまた、芸能の世界で苦しみながらも自分の存在に永遠の魂を注ぎこもうとするトッケビに思えてくる。
しかもまた、このトッケビは未だ自分の正体をつかめないでいる。
それでいい。
迷いながらも、コン・ユは今後も作品を通して自分が「トッケビの1人」であることを見せてくれるに違いない。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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