韓国ドラマ『ナビレラーそれでも蝶は舞うー』では、元郵便配達員の男が70歳を過ぎて、若い頃の憧れであったバレエを習い始める。そのきっかけとなったのは、偶然通りかかったバレエスタジオで若いダンサーが踊る姿だった。
支え合い絆が深まる2人の夢は叶うのか
家族のために真面目に郵便配達員として働いてきたシム・ドクチュル(パク・イナン)は、若い頃に父親の反対によりバレエを習う夢を諦めざるをえなかった。
ある時、たまたま通りかかったバレエスタジオで踊っていたイ・チェロク(ソン・ガン)の姿を見て、夢が蘇ってきた。
一方のチェロクは、才能がありながらも事情があり、バレエだけに集中できずスランプに陥っている。思うように結果が出ず苛立ちがつのっている。
ある時ドクチュルはバレエスタジオを訪れ、バレエを習いたいと申し出る。
チェロクの先生はドクチュルの年齢と姿を見て驚くが、結局は受け入れてくれた。
そしてチェロクはドクチュルを指導し、ドクチュルはバレエを習いながらチェロクのマネージャーをすることになる。
こうして、おじいさんと孫ほど年の差がある2人が、バレエを通じて絆を深めていくドラマが始まる。
このドラマはパク・イナンとソン・ガンの演技が素晴らしく、どんどん引き込まれていく。
冒頭でチェロクが薄暗いダンススタジオで踊っている姿は、ドクチュルだけでなく、私まで見入ってしまった。
ソン・ガンの小さい顔、長い手足、スッと伸びた背筋……。
ドラマでありながらバレリーナのようなソン・ガンの格好良さに、私のみならず誰もが見入ってしまうだろう。
また、バレエスタジオもとても素敵なのだ。
木の床の薄暗いスタジオに優しい光が入り、影絵のように見えるチェロクの舞う姿が何とも言えずに美しい。
そして、ドクチュル役のパク・イナン。この人の演技も素晴らしい。
バレエを練習している姿に年齢相応の危うさが良く出ている。
震える指先、つま先、そして揺れる体……。
若い人のように軽やかにはいかない。
それでもバレエができる喜びが毎日を有意義にしている。
チェロクのマネージャーとして肩にかけたカバンからメモ帳を取り出し、チェロクの日常生活を記録する。
体調管理も万全だ。
だが、自分は家族の反対もありコソコソ練習をしなくてはならない。
喜びと苦悩が入り混じった感情表現をパク・イナンが見事に演じている。
パク・イナンの演技を見ていると、私は父親を思い出し胸が熱くなる。
ドクチュルとチェロクはお互いを思いやり、チェロクは人間としても成長していく。
最初は生意気な態度をとっていたチェロクが、ドクチュルを思いやる優しい気持ちが芽生え、ホロリとさせられる。
歳の差のある2人の友情。
ドクチュルはチェロクだけではなく、周りの人々にも良い影響を与えている。
諦めなければいくつになっても夢は叶えられるかも……と、真剣に思えるドラマだ。
最後まで見た私は、思い出しては胸が一杯になる。
是非、最後まで見て欲しい。
きっと心に残るドラマになることだろう。
文=須坂のりこ