韓国・南西岸への旅16「青山島を一周」

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「俺も今はこんな生活だけど、しょうがないよね、自分でそうしたんだから……」と、男はポツリとそう言った。ずっと孤独だったのだと思う。普段は、誰も声をかけてこなかったのではないか。

菜の花畑から海を見る




誠実な人

そんな孤独がからだにしみついているようにも思えた。けれど、男はきっと言うかもしれない……誰のせいでもないよ、自らひとりぼっちになっちまったんだ。なにがあっても、辛抱していかなければならないだろう、と。
世俗的な幸せとは無縁かもしれないが、男の横顔を見ていると、孤独にじっと耐えている潔さが感じられた。
海の向こうには、まさに陽が沈んでいこうとしていた。水平線を赤く染める夕陽を見ていると、わずかばかりの郷愁に心がかすかに震えるようだった。
結局、タクシーで3時間近く島を案内してもらってから、再び港に戻ってきた。
私は接客するときのジェファンさんの表の顔を見たにすぎないけれど、タクシーの中に2人だけで少しでもいれば、およそ相手の心の内は透けて見えるものである。相手の息づかいまで聞こえる密閉された空間は、心理学の教科書よりも人間について多くを教えてくれる。




ジェファンさんからは、花札に興じて大声を出す、という印象だけはどうしても浮かんでこない。仮に、一緒に飲み屋に行っても会話がはずまないだろう。彼は人の悪口は言わないだろうし、誰かの詮索もしないはずだ。沈黙が続き、気まずい思いも起こる。けれど、その沈黙は彼の誠実さの表れでもある。無理に話題を作って自分を主人公にせず、誰も傷つけない。そんな生き方が見えてくる。
一方の私は、誠実であろうとすればするほど息が詰まってくる。人に気に入られたいだけで、誠実であらねばならぬと根っから思っていないのかもしれない。
だから、その場の雰囲気で浅はかな自分をさらけだしてしまう。酒に酔うと特にその傾向があるが、ジュファンさんといれば、どんなに飲んでも軽薄な言葉を口にしなくても済みそうだ。
「今度来たら、いつでも電話してください」
別れ際にそう言ったあとで、彼は「日曜日の午前中だけ駄目なんです」と付け加えた。理由は、欠かさず教会に行くからだという。最後まで、私が彼に感じた実直さは変わらなかった。

文・写真=康 熙奉(カン・ヒボン)

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