王が食べる料理では、どんなものがいつも出されていたのか。スラサンの基本は御飯、湯、汁のある煮物、鍋物、沈菜(キムチの原型の漬物)と12種類のおかずで構成された。御飯は白飯と赤飯の二つ、ワカメスープとコムタン(牛の肉と内臓を長時間煮たスープ)も出て、どちらか好きなほうを食べられるようになっていた。
やっぱり食べすぎ
12種類のおかずも豪華版だ。肉や魚の焼き物、チヂミ、肉類の蒸し物、熟菜(野菜類を茹でて作るナムル)、生菜(野菜類を生のままで作るナムル)、煮込み、漬物、魚介類の塩辛、干し魚、海苔、刺し身、半熟卵、スンニュン(おこげに湯を加えてお茶漬けのようにしたもの)など。もちろんすべてを食べることはできない。少しだけ箸を付けて終わり、というわけで、残るものが多かった。
今でも韓国では、「食べ物を残すということは十分に満足したという意思表示である」という考え方が根強く、残すことに抵抗感が少ない。「もったいない精神」からは縁遠いのも、スラサンの影響かもしれない。
食器は季節によって異なった。寒い季節には銀食器を使い、暑い季節には磁器食器を使った。けれど、スプーンと箸はいつも銀のものだった。銀は毒に接すると変色するため、事前に毒の有無をチェックできる効果もあったからだ。
まず、朝起きてすぐに寝床でお粥や重湯などを食べるのが初朝飯である。乾き物のおかずが2、3種類出て、他に塩、蜂蜜、味噌などが用意された。漬物として、薄く切った白菜や大根で作った汁の多いキムチと、大根だけを大きく切って塩につけて作る汁なしのキムチがよく出た。
昼スラはごく簡単な軽食である。とはいっても、庶民からすればとんでもない量だ。温麺、冷麺、雑煮、マンドゥ(日本でいえば餃子)、肉の蒸し物、刺し身、チヂミなど。これでも、スラサンの中では「軽食」とされた。やっぱり食べすぎである。
夜食によく出されたのは麺、薬食、シッケ(日本でいえば甘酒のようなもの)、ウユジュク(牛乳のお粥)など。当時の牛乳は高価で一般庶民が簡単に口にできるものではなかった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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