23歳のキム・スヒョンが主演した『ドリームハイ』はドラマとして大成功を収め、彼にオファーが殺到するようになり、その末に選んだ作品が『太陽を抱く月』だった。今回、『韓国ドラマ!愛と知性の10大男優』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/星海社)を通して、キム・スヒョンの主演した傑作時代劇について振り返ってみよう。
重要なキャリアを築く
『太陽を抱く月』では、誰が考えても難しい役になることは想像できた。キム・スヒョンが扮した国王のフォンは、初恋の人をいつまでも忘れられず、心に深い傷を持っていた。
それだけに暗い表情の場面が続く。誰も信じられないという懐疑的な雰囲気を常に抱えていた国王なのだ。
そんなフォンが、亡くなったはずだと思っていた初恋の人に似た女性と間近に接するようになった。
冷静でいられるわけがない。ハン・ガインが演じたウォルを前にすると、フォンは心を乱されてしまうのだった。
確かに、『ドリームハイ』で演じたソン・サムドンとは180度違う役柄だった。キム・スヒョンも大いに悩んだことだろうが、必死になって彼なりの国王像を築いていった。
『太陽を抱く月』も終盤を迎えると、ウォルが記憶を取り戻す場面に入っていく。それにつれて、フォンの心境が目まぐるしく変わる。こうした変化に対応しながら、キム・スヒョンは人間の奥底にある感情の渦を1つ1つ見せていった。
それは、まるで10歳ほど年を重ねたような熟練した演技だった。
当時のことをキム・スヒョンがこう振り返る。
「ペ・ヨンジュンさんに本当に助けられました。全話欠かさずチェックしてアドバイスをくださいました」
ドラマ序盤のキム・スヒョンは上手に演じようとするあまり、気持ちだけが先走っていた。そのことをペ・ヨンジュンは見逃さなかったのだ。
彼はキム・スヒョンにこう言った。
「君が演じているフォンという人物は頭が切れ、堂々とした魅力を持っていることは確かだけど、もっと周りを見たほうがいい」
ペ・ヨンジュンに忠告されたキム・スヒョンはアドバイスを生かした。
「ペ・ヨンジュンさんに教えていただいたあと、自信を持って演じることができるようになりました」
『太陽を抱く月』で重要なキャリアを築いたキム・スヒョン。今でもペ・ヨンジュンに心から感謝しているという。
結局、『太陽を抱く月』は韓国で最高視聴率が40%を越える大ヒットとなった。
これほどの人気作に主演できたキム・スヒョンは、ドラマが描く世界を冷静に分析していた。
「『太陽を抱く月』は、愛の物語というひとつの枠の中に、たくさんの要素がたっぷりと詰め込まれています。例えば呪術。呪いをかけるとか、現実にはないような要素があります。そして、ドラマの中でどんどん謎を解いていくような過程には、推理劇のような楽しみもあります」
このように語ったあとでキム・スヒョンは『太陽を抱く月』について「総合的に言うと、本当に美しい愛情物語なのです」と高く評価した。
そうした愛情物語の中で、キム・スヒョンが演じた架空の王は、どこか幻想的で不思議な魅力を持っていた。それを導き出したキム・スヒョンは、大ヒット作を経てひと回り大きな俳優に成長した。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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