ドラマ『キム秘書はいったい、なぜ?』では、冒頭からパク・ソジュンが演じるヨンジュンという男をあらゆる場面を駆使して紹介していた。そこがこのドラマの一番の見どころではないか、と思えるほどだった。
究極的な面白さ
パク・ソジュンは、『キム秘書はいったい、なぜ?』で完璧な人物を演じる必要があった。
いくつもの外国語をネイティブのように操り、会社の役員たちが集まった経営会議で誰もが驚くような経営上の数字を速射砲のようにしゃべったりする。
そして、大勢の女性の関心の的になるような立ち居振る舞い……このように、ヨンジュンという人物のすべてを見事な映像で見せていた。それはまさに「ビジュアルの帝王」と呼べるほどの姿だった。一見すると、極端なナルシストでキザすぎるのだが、長身でスタイル抜群のイケメンが演じると、これは本当にその通りだな、と見ている人が納得してしまう部分があった。
それにもかかわらず、パク・ミニョンが扮するキム秘書が、急に仕事を辞めると言い出したところで、ヨンジュンはもろくも崩れていく。
「なぜ彼女は仕事をやめようとするのか」
その理由がわからず迷い続けるのである。
キム秘書が仕事をやめるのは、父親から押しつけられた借金をすべて返し終えて、これからは自分なりの新しい人生を始めたくなったからなのだが、そういう生き方がまったく理解できないのがナルシストのヨンジュンだった。
むしろ、そのほうが人間的かもしれない。
完璧主義者が実は人の機微に鈍感なナルシストであった、というキャラクター設定が『キム秘書はいったい、なぜ?』のツボであり、それを演じるパク・ソジュンが本当にいい持ち味を発揮しているところに、このドラマの究極的な面白さがある。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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