2020年2月9日(現地時間)に行なわれた第92回アカデミー賞の授賞式で、『パラサイト 半地下の家族』が「作品賞」「監督賞」「脚本賞」「国際長編映画賞」という主要な4つの賞を獲得した。世界の映画の歴史を変える快挙であった。
まぶしいばかりの光を浴びて
映画『パラサイト』でとても印象的な場面がある。
それは、キム一家の長男ギウ(チェ・ウシク)が、家庭教師の面接に豪邸まで行くシーンだ。半地下に住んでいる彼は、高級住宅地の佇まいに戸惑うばかりだった。
ギウは、おそるおそる周囲を見渡しながら豪邸に入って、ゆっくりと階段を上っていく。そこは完全に未知の世界だった。
そうやって階段を上りながら、中庭の入口で先を見上げようとするところに陽が差し込んできて、視界がさえぎられる。ここが、ポン・ジュノ監督の独特の光の使い方だ。この光が、半地下と豪邸の境目を鮮明に表していた。
2月9日のアカデミー賞授賞式の後で、ポン・ジュノ監督が「まだ夢を見ているようです」と語っていた。それが正直な気持ちだろう。そんな夢心地のポン・ジュノ監督がアカデミー賞の会場で見ていた風景はどういうものだったのだろうか。
若いときから一途に映画制作に打ち込んできて、アメリカ映画の名だたる傑作に憧れてきた。
そんな経緯があるだけに、アカデミー賞の「監督賞」を受けたとき、マーティン・スコセッシ監督への最大の尊敬の念を伝えていた。
マーティン・スコセッシ監督だけではない。会場に集っていた人たちは、ポン・ジュノ監督にとっては夢に導いてくれた巨人ばかりであった。
その中で「監督賞」や「脚本賞」を受け、ついに「作品賞」まで獲得した。彼が、その瞬間に世界の映画界の頂点に立ったことは間違いないだろう。
『パラサイト』の中で、ギウがまぶしい光を浴びて立ちくらみのような表情をするが、オスカーの夜のポン・ジュノ監督もまた、異次元のような光があふれる光景を見ながら、現実と幻想の境目にいたのかもしれない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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