キム・ヨジンの場合
キム・ヨジンもブラックリスト事件の被害者だ。
彼女は、韓国時代劇をよく見る日本の視聴者にも顔が知られた女優であろう。人気を集めた時代劇で重要な役割を演じていたからだ。
『宮廷女官 チャングムの誓い』では、済州島(チェジュド)に流されたチャングムに医術を教えたチャンドクとして出演していた。『イ・サン』では正祖(チョンジョ)の政敵とも言える貞純(チョンスン)王后に扮していたし、『華政(ファジョン)』では光海君(クァンヘグン)を裏で支えた悪女の金介屎(キム・ゲシ)を演じていた。
そのキム・ヨジンが保守政権から様々な妨害を受けていた。
ブラックリストを実際に作成した国家情報院はキム・ヨジンに何をしたのか。
それは2011年のことだ。
キム・ヨジンは、同じくブラックリストに載ったベテラン男優のムン・ソングンと合成のヌード写真を作られていた。
なんと、男女がベッドに横たわった写真の顔だけをキム・ヨジンとムン・ソングンにすりかえたもの。そんな合成写真は、2人のイメージ失墜を狙って国家情報院が作って露出させたという。
被害を受けたキム・ヨジンがあきれかえるほど幼稚な手口であった。
こうした事件があっても、「韓国の芸能人が政治について積極的に発言をする」という傾向は変わっていない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)