韓国人の死生観について

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祭祀の祭壇に御馳走を並べるのは戻ってくる先祖のためだ

伝統的価値観が通用しない時代だが……

確かに、時代は変わってきた。
韓国ではクリスチャンが増えて、朝鮮半島の土着的な信仰と一線を画すようになった。なによりも、キリスト教徒は先祖崇拝につながる祭祀を一般的には行なわない。
また、土葬は広い墓地を必要とするという事情から、都会では火葬が奨励されている。火葬の場合は、「人が死ねば肉体は土に還る」という伝統的な考え方を実現できない。
加えて、社会生活の中での精神的な抑圧が強くなってしまった。




しがらみの多い人間関係、深刻な経済格差、北朝鮮との緊張激化、極端な序列社会……そうした複雑な抑圧要因によって精神が耐えられなくなり、感情的で突発的な死を選ぶ人も増えてきている。
狭い国土に5000万人が暮らす韓国では、朝鮮王朝時代のごとき一枚岩のような伝統的価値観が通用しなくなっているが、病気にしろ自殺にしろ世を去る人たちの心には「魂は永遠」という根本的な思想が残っているはずだ。
人間は住む土地の気候や風土の中で、伝統的な死生観に影響を受けてきた。韓国のような狭い国では、特にその傾向が強い。
「肉体は消滅しても魂は永遠に生きる」
韓国の多くの人が今もそう信じている。亡くなった人は、生きている人の心の中でいつまでも生き続けるのだ。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化・社会や、日韓交流の歴史を描いた著作が多い。主な著書は『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。

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